だが、この種のブラックホールの数に関するパラメーターを特定することは、恒星進化モデルを作成するためだけでなく、太陽系外惑星全般と、宇宙における生命の進化の可能性を理解するためにも重要になる。けれども現在までのところ、(周囲の物質を降着させる活動を示さない)休眠ブラックホールについては、依然として見つけるのが困難なままだ。
膨大な数の休眠ブラックホールが存在するはずだが、それが観測されていないと思われると指摘するのは、ドイツにある欧州南天天文台(ESO)本部の博士課程学生、イジー・ザークだ。
しかし、天体物理学的な観点からすると、休眠状態の恒星質量ブラックホールを見つけることは、理論天文学者らが恒星進化モデルを検証できるようにするために重要なのだ。
恒星質量ブラックホール(質量が太陽の5~100倍と考えられている)は、形成過程で重元素を周囲に放出する可能性が高い。これは、銀河の環境を物質的に豊かにし、次世代の恒星や惑星の組成に影響を及ぼす。
天文学者らは、どのような方法で恒星質量ブラックホールを検出するのだろうか。
その検出は一筋縄ではいかない。連星系(2つの恒星が重力的に結びついた星系)に大質量天体が潜在しているかもしれないことを示す最初の兆候は、楕円体状変光星の観測によって得られる。
楕円体状変光星は、連星系を構成する2つの恒星の軌道が互いに非常に接近しているため、恒星間に働く強力な重力によって、2つの恒星が1つの回転楕円体の形状になっていると、米ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(CFA)は説明している。これにより、観測者に見える光を発する領域の面積が変化するために、明るさに変動が生じると、CFAは指摘する。
だが、重要な点は、楕円体状変光星が、非常に大きな質量を持つ見えない伴星の存在を示している可能性があることだ。