ビジネス

2015.05.28

「ブラック化」する米ウーバー社の労働環境

(Photo by Evelyn Hockstein/For The Washington Post via Getty Images)



配車サービスのウーバーは、新人ドライバーの給料を引き下げる動きを進めている。同社は「一部のドライバーに課す手数料を過去最高レベルの30%に引き上げる」とフォーブスの取材に対しコメントした。これはサンフランシスコでの新たな試験的取り組み。

UberX(ドライバー自身の車を使った配車サービス)に登録する新人ドライバーの場合、乗客を1週間に20人乗せるようになるまでは30%の手数料を課し、その翌週も20人を乗せれば25%の手数料、それ以降は20%の手数料に固定される。

これにより最も痛手を被るのはパートタイムの新人ドライバーだろう。以前は1週間に数時間しか働かないドライバーも20%の手数料で乗務していたが、今後はその料率に引き下げることは不可能だ。フルタイムのドライバーたちも、最初の30~40人の乗客をとる間の条件はこれまでより悪化する。

ウーバーは以前からドライバーの手数料を引き上げた際の影響について調査してきた。今回の措置は「賃金を下げてもドライバーの応募は減らない」と同社が判断したことを意味する。

ウーバーにしろ、その競合のリフトにしろ、ドライバーからの手数料が最大の収入源であるが、リフトの場合は「週に50時間以上勤務したら手数料ゼロ」、「30~50時間の勤務であれば10%の手数料」という料率体系だ。

ウーバーもリフトに倣い、段階式の手数料体系を導入したのだが、ウーバーのドライバーはいくら働いても乗客からの利用料金の100%を手にすることはなく、80%どまりだという点が大きく違っている。

サンフランシスコで働く新人ドライバーに取材したところ、「自分の給料が下がることについての事前通知はなく、導入直前に携帯メッセージで、新体系の手数料を知らされた」と述べた。

「混乱したよ。手数料は20%と思っていたからね。サイトを確かめたけど、手数料は20%と書いてあった。だから『一体、どうなってるの?』っていう感じだよ」

しかし、彼はその翌日、ウーバーのドライバーアプリ上で、新たな手数料体系に同意するように求められた。手数料が下がることで、勤務をやめた者もいる。

「自分の場合、20%の手数料には届かないからね。仮に届いたところでそれまで30%の手数料を課されてきたのかと思えばイラっとするよね」

ウーバーのエバ・ベーレント広報担当によると、この手数料体系の導入は「限られた試み」であり、「客を乗せる回数を増やせばもっと稼げるし、4月以前に登録したドライバーには影響がない」と述べている。

ウーバーは今や500億ドルともいわれるその企業価値をさらに高めたいのかもしれない。有名投資家のマイケル・ノボグラッツ氏は先日、ウーバーの元CFOのブレント・カリニコス氏と対談した。
「ドライバーの不満というリスクを負っても、手数料を引き上げるのは何故ですか?」との質問に、カリニコス氏は「それが可能だからですよ」と即答した。

文=エレン・ユエ(Forbes)/ 編集=上田裕資

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