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2020.06.18 16:00

本家トゥールビヨンモデルがさらなる進化を遂げた

マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887

2000年初頭からしばらく続いた世界的時計ブームのおかげで、日本でも時計に対する見方が随分かわった。それ以前までは、多くの人がほんの数ブランドしか知らなかったわけだが、この時期を境にブランドの認知度は格段に上がったように思う。

そして、それに伴って機構についての知識も向上している。10数年前までは、クロノグラフのセンター針が動かないので「壊れてる!」と怒る人もいたようだし(センター針が秒針のものも確かにあるが)。それも、ここ数年は、少なくとも筆者の耳には入ってこなくなった。

時を同じくして知れることになったのが、複雑機構である。とくにトゥールビヨンは複雑時計の代名詞的存在として、2000年代には多くのブランドがローンチしていた。自社製作ができなくても、それを得意とするブランドから供給してもらう、いわゆるOEMでの発表もいくつか見られたほどだ。

1795年にアブライアン-ルイ・ブレゲによって発明されたトゥールビヨンは、懐中時計の精度を高める機構なのだが、技術的に高度で難しく、200年以上経った現在でもつくれる時計師は限られている。一部のブランドがOEMしてでもトゥールビヨンをラインナップに加えたかったのは、技術力をアピールするツールのひとつとなりえたからである。

ブレゲが考案したトゥールビヨン


ここでトゥールビヨンについて簡単に説明することにしよう。

機械式時計には、定時制を担うテンプというものがある。このテンプにはヒゲゼンマイがついており、アンクルによって振られたテンプは、それによって戻ろうとする。ところが、懐中時計はポケットの中で直立しているため、重力に引っ張られヒゲゼンマイは次第に下に伸びてしまう。こうなると、設定された定時性が維持できなくなる。

これを根本的に解決するために、ガンギ車やテンプなど調速脱進機構全体をキャリッジ(カゴ)に入れて1分間、あるいは4分間に1回転するようにしたものである。つまり、キャリッジを回転させることによって、重力の影響をプラス、マイナスの力として振り分け、一回転することで力を相殺して精度を維持する。重力による姿勢差を構造的になくすのではなく、重力を利用して姿勢差を解消する仕組みなのである。

トゥールビヨンの本家本元であるブレゲは、今年も搭載モデル「マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887」を発表している。

この「マリーン」は、ブレゲが1815年に1815年にフランス国王ルイ18世より「フランス王国海軍時計師」の称号を授かり、マリン・クロノメーターの製作を行なったことに端を発する。

当時、マリン・クロノメーターは船の現在地を計測するために、とても重要な役割を果たしていた。緯度においては計器と天体の位置測定で容易に計れたのだが、径度が非常に難しく、時刻と太陽の位置から測定する方法がとられていたのだ。それには正確さに加えて、常に船上に置かれ、揺れても故障することがない強靭な時計が求められた。当時のフランス王国において、そんな重要な機械を作る任を担っていたのが、ブレゲだったのだ。
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文=福留亮司

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