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2017.10.17 07:30

難民を救う「テントになるジャケット」で起業した23歳の女性

Anjo Kan / shutterstock.com

ニューヨークのパーソンズ美術大学出身の23歳のアンジェラ・ルナは2016年、卒業論文の研究プロジェクトの一貫として、難民向けの特殊な防災ジャケットを試作した。ルナは今年のフォーブスの「30アンダー30(30歳未満の重要人物)」のアート&デザイン部門を受賞した。

ルナは7000ドルの資金を母から得て、9着の防災ジャケットのプロトタイプを作った。その中には“インビジブルジャケット([In]visible jacket)”と呼ばれる、完全防水で緊急時にはテントになる特殊なジャケットもあった。ポリエステル素材のこの服は防水ジッパーも備え、水の侵入を100%防ぐ。リバーシブル仕様になっており、片面は深いグリーンでもう一面は光を反射するシルバーだ。

ルナは卒論の執筆にあたり難民の人々の暮らしをリサーチし、卒業後の2016年5月には、ギリシャとトルコの難民キャンプで10日間を過ごした。彼女はそこで人々の悲惨な暮らしぶりを目の当たりにした。

難民の人々に役立つジャケットを作りたいと思ったルナは、キックスターターでキャンペーンを始動。参加者は200ドルを払うと自分のジャケットが入手できるだけでなく、1着を難民支援機関のRahma Reliefを通じて、シリアの難民キャンプに送れる仕組みにした。このキャンペーンは総額10万ドルを調達し、500着のジャケットを寄付することに成功した。

ルナは当初このプロジェクトを全くの慈善事業と考えていたが、キックスターターの成功を聞きつけた企業から、商品化の要望が届いた。「ニューハンプシャー州の業者から、インビジブルジャケットをアウトドア用のアイテムとして販売したいという話が来たときには驚いた。その後、ロサンゼルのサーフショップからも提案が来た」とルナは言う。

ルナは自ら立ち上げた企業「ADIFF」で、このジャケットをマス向けの製品として送り出そうとしている。ADIFFは先日、ボストンのスタートアップアクセラレータ「MassChallenge」の26社のファイナリストの1社に選ばれた。ここで勝ち残れば5万ドルから10万ドルの資金を調達し、メンターらの指導を受けられるほか、ワークショップにも参加できる。

ルナは現在、ジャケットの製造を中国の業者にアウトソーシングしているが、今後は米国内に製造拠点を移し、移民やホームレスの人々を雇用したいと考えている。「5年ほどの長期的なプランを描いている。プロジェクトの実現のためには新たな資金が必要だ」とルナは話した。

編集=上田裕資

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