マスクは2月4日にツイッターで、前日に参加した会議では当初の議題に入っていなかったにもかかわらず、難民や移民の入国制限に関して話し合いを行ったこと、気候変動の問題についても議論したことを明らかにした。ただ、こうしたマスクの行動が全て、テスラにとって最善のものだということにはならない。
マスクはトランプが創設した「製造業雇用イニシアチブ」にも、フォードやデルテクノロジーズ、インテル、ゼネラル・エレクトリック、ボーイング、米国労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)のトップらと共に参加している。
さらに、マスクはトランプの「大統領戦略・経済フォーラム」のメンバーでもある。配車サービス、ウーバーのトラビス・カラニックCEOもこのフォーラムに加わることになっていたが、登録を解除するユーザーの急増などにより、参加を見送った。
こうした中で、マスクの存在感があまりに高まれば、テスラの売り上げにも影響が出る可能性がある(トランプはマスクの存在を、自分に都合が良い一方でマスクには不都合な形になるよう利用することができる)。
年内に出荷開始が予定されているテスラの「モデル3」は、これまでに発売している「モデルS」「モデルX」より低価格に設定されている。だが、それでも平均的なテスラ車の購入者は、共和党より民主党の支持者の方が多くを占めると考えられる。大統領選でヒラリー・クリントンを支持した高学歴の人たちの方が多いと考える人がいても、驚くには値しない。
マスクはすでに渦中の人?
アップルやフェイスブック、グーグル、マイクロソフトをはじめとする米国企業97社は2月5日、トランプが移民の入国を制限した大統領令は違法だとして、異議を申し立てる法廷助言書を提出。テスラはスペースXと共に、遅れてこれに加わった。マスクは政治的な問題に巻き込まれたくないと考えているかもしれないが、すでに渦中に引き込まれてしまっているのかもしれない。
トランプが自分自身のツイッターの使い方をコントロールする力(または力がないこと)を考えれば、入国制限に関する大統領令を巡る混乱は、モデル3が工場から出荷され始める頃にはすでに大昔のことのようになっているかもしれない。テスラにとっては、別の何かがより重要な問題になっている可能性もある。
しかし、今後もトランプがテスラの顧客層を遠ざけるような立場を取り続けたとすれば、テスラにとっては(車の売り上げだけを考えた場合)好材料よりも、悪材料の方が多くなるだろう。マスクはトランプに近い立場を維持した方が、その悪材料を抑えられるのかもしれない。