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2016.12.12 08:30

激化する米中「半導体戦争」 最先端チップ開発を急ぐ中国の焦り

Victor Moussa / shutterstock.com

オバマ大統領は12月2日、安全保障上の問題を理由に、中国企業による米国内の半導体メーカーの買収を阻止する大統領令を発した。ドイツの「アイクストロン」のカリフォルニア州の子会社を中国企業が買収しようとしていた。

中国では過去10年間、半導体が最大の輸入品となっている。年間の輸入額は約2,000億ドル(約22兆9,000億円)に達する。これは、世界の半導体供給量の半分に相当する量だ。ベイン・アンド・カンパニーによると、中国の半導体自給率は15%程度に過ぎず、貿易赤字額は石油を上回り最大だという。

中国政府は、半導体技術を米国や韓国、日本に依存する状況から脱却するべく2014年に1,500億ドル(約17兆2,000億円)を投じて、国産比率を現状の9%から2025年までに70%まで高める方針を打ち出した。そして6月には国有企業である清華紫光集団と武漢新芯集成電路製造(XMC)を統合させて、国内最大のチップメーカー「長江存儲科技(YMST)」を誕生させた。

しかし、政府による資金援助があってもYMSTが国際的半導体メーカーへ成長することは容易ではない。「世界の半導体市場でシェアを拡大するには、資金力だけでは不十分だ。中国企業は、大手グローバル企業と提携して技術力を高める必要がある」とベインでアジア・パシフィック地域のテクノロジー分野を統括するケビン・ミーハンは指摘する。

半導体市場は参入障壁が高く、中国メーカーが特に苦労しているのが最先端技術である3次元NANDフラッシュメモリの開発だ。3次元NANDフラッシュメモリは、主にモバイル端末やPC、サーバ向けの需要が急増しているが、大量生産できる技術を持ったメーカーは世界でも数えるほどしかない。XMCは現在、米国の半導体メーカーであるスパンションと3次元NAND技術の共同開発を行っているが、両社とも大量生産のノウハウを持っていないことが課題だ。

調査会社TrendForceによると、XMCは3月に新しいウェハー工場の建設に着手し、2018年に稼働を開始する予定だという。目標とするウェハー生産量は月間20万枚だが、TrendForceはその実現には10年を要すると分析している。

買収で半導体技術の獲得を目指す中国

XMCは大量生産の技術を獲得するため、中国国外の大手メーカーの買収を模索したが、インテル、サムスン、サンディスク、SKハイニックス、東芝などは買収金額が高額過ぎる。そこで、XMCは米国で半導体メモリ分野第3位のマイクロン・テクノロジーに狙いを定め、清華紫光集団が昨年、マイクロンに230億ドルで買収を持ち掛けた。しかし、米国政府が安全保障上のリスクを理由にこの協議にストップをかけた。Commercial Timesは、YMTCが買収断念後もマイクロンとのライセンス契約締結や協業を試みたと報じたが、YMTC側はこれを否定している。

しかし、Nikkei Asian ReviewはYMTCのDing Wenwu副会長の言葉を引用し、同社がマイクロンの他にも、サムスン、サンディスク、SKハイニックス、東芝とパートナーシップの締結に向けて協議を行っていると報じた。

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編集=上田裕資

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