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2016.11.30

アメリカで65歳未満の認知症発症率が低下、調査で新たな発見

Kzenon / shutterstock.com

新たな全国調査によって、65歳未満のアメリカ人の認知症発症率が低くなっていることが判明した。

米国医師会雑誌(JAMA)に掲載されたこの研究報告は、過去にアメリカで実施された地域調査や、近年ヨーロッパで実施された研究の結果を裏付けるものだ。認知症関連の疾患の有病率が低下した原因は、非常に複雑だ。しかし、理由が何であれ、これは朗報というべきだろう。

とはいえ、今回の結果が「認知症を患うアメリカ人が今後減少していく」という意味ではないことは忘れてはならない。高齢者が増えれば、さまざまな形で深刻な認知障害を患う人も増える。この調査が意味するのは、「高齢期に入った人々の認知症の発症率が低下しつつある」ということだ。

2000年当時、米国では65歳以上の高齢者の約11.6%が認知症を患っていたが、2012年にはそれが約8.6%にまで減少。また同年には、軽度の認知機能障害の高齢者の割合が全体の約19%と、2000年と比べて21%減少した。

超高齢者層においても、認知症リスクは目立って低下しており、2000年の34%から2012年には30%弱まで減少している。

調査結果は年齢・性別によって調整されており、HRS(健康と退職に関する調査)と呼ばれる高齢者を対象とした大規模調査で得られたサンプルを基にしている。

調査では、アルツハイマー病だけではなく、あらゆるタイプの認知症について検証を行った。実際、今回の結果の要因は、血管性認知症、または脳卒中に関連する認知症の低下の可能性が高い。

一体何が起こったのだろうか? 報告書の著者である調査員らもはっきりと分かっていないが、教育水準の上昇と何らかの関連があるようだ。高い教育を受けている人ほど、65歳以降に認知症を発症する可能性が低くなる。

だが、なぜだろうか? 生涯教育や認知的な刺激の蓄積が、認知症を予防し、発症を遅らせるのかもしれない。高い教育を受けている人々は、そうでない人と比べて健康な生活をしている、あるいは優れた医療を受けているのかもしれない。

もう1つ面白い発見がある。認知症の発症率が下がっている一方で、脳卒中のリスクを増加させる肥満や糖尿病の有病率が高くなっていることだ。しかし研究者たちは、高齢者が昔と比べてこれらの症状にうまく対処している可能性を指摘しており、結果として、認知症の原因となる脳卒中を発症する確率が減少しているという。

報告書の著者も認めているように、認知症の有病率低下の理由は極めて複雑なのだ。

公衆衛生の改善と医療技術の発達によって人々の寿命が長くなれば、認知機能障害を患う人も増える。こうした傾向は今後も続いていくだろう。また、今回のような研究報告があっても、85歳以上のアメリカ人の約30%は認知症に関連した症状を発症する。

しかし、はっきりとした理由は分かっていないが、私たちが認知機能障害を予防できる可能性は劇的に高くなっているのだ。それもかなり劇的に。

編集=森 美歩

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