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2024.02.27 14:45

「納税は議員個人の判断」発言を税理士が解説、では確定申告しなかったら?

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財務大臣である鈴木俊一議員による「納税は議員個人の判断」発言が国民の反感を買っている。この問題にも絡め、「確定申告をもし行わなかったらどうなるか」について、坂口税理士事務所の坂口勝啓税理士に以下、ご寄稿いただいた。


ここでは日本の税金のしくみをおさらいし、「確定申告をしなかったらどうなるか」についてお話したいと思います。

日本の税金のしくみ


日本における税金の制度は、1.自分で税金を計算する、2.自分で税務署に申告(報告)するという「申告納税制度」、すなわち「自分の税金計算は自分で計算して申告する」という方式を採用しています。だから、皆さんは確定申告前の今、一生懸命に確定申告をするための帳簿の整理を行い、領収書等を集めているのです。

この「申告納税制度」による確定申告は国民の義務であるのに、鈴木俊一議員は「納税は議員個人の判断」と発言してしまったので、国民が怒ってしまったのも当然です。

ただし現在の法律においては、「パーティー券」は政治活動のための受取とされており「収益性がない」と考えられているため、消費税の対象にはなりません。そして、所得税も消費税も「収益性」が認められる取引に対して課される税金なので、消費税法上「収益性」がないという見解が示されていれば、所得税法上も「収益性」がない、という取り扱いになるのです(「政治団体の場合、パーティー券を販売して収入を得たとしても、それは法人税の対象である『収益事業』とは見なされないと実務上、解釈されていて非課税となる」とするこちらの記事も参考になります。この税法自体にも、国民の怒りがあらわれたのですね)。

そういうわけで、繰り返しますが、所得税や法人税は、収益(所得)に対して発生する税金なので、鈴木議員は「納税は議員個人の判断」と言ったのですね。

ただ、税金義務が発生しないのはあくまで「収益性」が認められない場合だけなので、その点がポイントになります。

確定申告をしなかったらどうなる?


さて、話を戻します。基本的に確定申告は誰もがしなければなりません。それでは、その義務である確定申告を行わなかったら、どうなるのでしょうか? 一言で言いますと、義務を果たさないわけですからペナルティが課されます。ペナルティはさらに内容によって3つに分かれます。
 
・過少申告加算税
・無申告加算税
・重加算税
 
どれも「加算」という言葉が付いてます。「加算」なので、通常の税金に追加して払う税金になります。これがペナルティですね。
 
・過少申告加算税

「過少」に「申告」したことにより「加算」される税金です。申告は正しく行うことが前提になっていますが、当然「過少に」「申告」したら税金は少なくなりますので、「過少に」「申告」したことが税務署から指摘されたら、ペナルティが課されます。金額は、「過少」に申告した額の10%です。
 
・無申告加算税

「申告」をしなかった場合に「加算」される税金です。「申告」は義務なので、その義務を怠った場合のペナルティです。本当の意味での「確定申告をしなかった場合」のペナルティですね。金額は、「申告」した場合の税金額の15%です。
 
・重加算税

悪質な「申告」が行われた場合に「加算」される税金です。正しく行っていないという意味では過少申告加算税と同じですが、過少申告加算税がわざとではない(正当な理由がある)場合に課される加算税に対して、重加算税は「仮装隠蔽」すなわち悪意・わざと正しくない「申告」を行った場合に課されます。金額は、「申告」した場合の税金額の40%です。すなわち1.4倍の税金を払うことになります。
 
上記3「加算税」は状況によって税率が変わったりするのですが、基本は上記になります。
 
納税は国民の三大義務の一つです。国会議員の発言や行動に腹が立つ気持ちは私も同じですが、国は国民が納める税金で運営されますので、国民として義務を果たし、より良い日本にするんだという気持ちを持つことも大事なことだと思います。




坂口勝啓◎2003年10月~公認会計士2次試験合格後、あずさ監査法人入所。主にIPO監査業務に従事し、IPOを実現した社数は日本トップクラス。2018年3月~WARCに入社。IPO監査の経験を生かし、IPOコンサルティングに従事。2018年、坂口税理士事務所設立。監査法人における監査業務の経験を生かし、他の税理士では実績の少ない「書面添付制度」を積極的に推進するとともに、税務業務だけでなく、事業計画策定・融資支援・補助金等支援等、支援企業の「未来志向」を掲げ高付加価値を提供。

文=坂口勝啓 編集=石井節子

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