2025年8月25日発売のForbes JAPAN10月号は「30 UNDER 30」特集。30歳未満の次世代をけん引する若い才能に光を当てるアワードで『Forbes JAPAN』では18年より開催し、7年間で総計300人を選出してきた。
今年も4つのカテゴリから30人を選出。ART&STYLE部門の受賞者のひとりが、アニメーターのけろりらだ。『ぼっち・ざ・ろっく!』などのヒット作を手がけ、いま勢いに乗る彼が、20代にしてすでに視線を向けているのは、アニメーター育成を通じて切り拓くさらなる日本アニメの可能性だ。
現在、日本のアニメの世界的な市場規模は3兆3465億円(日本動画協会「アニメ産業リポート2024」)と右肩上がり。ジャパン・クオリティを支えるアニメーターのなかでも、生き生きとした表情や演出でキャラクターに命を吹き込むとして同業者からも信頼が厚いのがけろりらだ。
出世作は、陰キャな女子高生がライブハウスでのバンド活動に挑むアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』(原作:はまじあき/2022年秋放送)。キャラクターデザインと総作画監督を務めた本作は大ヒットを記録し、2023年には米国のアニメサイト『Anime Treding』が発表したアワードで大賞「ANIME OF THE YEAR」を含む当時史上最多8部門を受賞した。
アニメーターを志し、見よう見まねでこなす日々
幼少期から、日本画を描く父の身の回りには常に本格的な画材があり、自然に絵を描く環境にあった。美術の時間に先生に褒められ、友達に「絵、描いてよ」と頼まれるのが嬉しくて絵を描き続けたが、それが仕事になるとは思っていなかった。
デザイン系の大学に進学したものの、すぐに退学。アルバイトをしながらインターネット上で作品を発表する日々を送った。そんな折に訪れたイラストレーターのイベントがひとつの転機となる。
「オーストリア出身のBahiJD(バヒジェイディー)さんがライブペイントをしていて、最初は一枚一枚何を描いているか分からなかったんですが、最後に再生したら絵が動いて。その時、こういう仕事があるんだ!と、アニメーターという職業を知りました。その後、アニメ制作会社が募集を出していたので、勢いと流れのままにイラストを見せに行って。『線下手だねー』と言われつつ、入れてもらいました」
経験ゼロから見よう見まねで仕事をこなす日々。やがて、アニメ制作会社Clover Worksのアニメーションプロデューサー・梅原翔太から声がかかった。2度目の転機となったのは、野島伸司が初めてアニメの原案・脚本を務めたオリジナルアニメ『ワンダーエッグ・プライオリティ』。作画監督という責任あるポジションを担い、監督や演出陣、現場全体から寄せられる高度な要望に応えた。
「大変だし、途中でアニメーターを辞めようと思ったこともありました。けれど、終わって振り返ってみるとやり遂げた感がありましたし、多くの人と連携を取る仕事を通して、実感を持って『アニメ作りの一員になれた』と思えたんです」



