米国では最近、高等教育界で大きな変化が起きており、世界の舞台における同国の大学の評判が危ぶまれている。コロナ禍の混乱と経済不安の余波を受け、米国のドナルド・トランプ政権は高等教育機関に焦点を当て、大規模な改革に取り組んできた。ハーバード大学やペンシルベニア大学、コロンビア大学をはじめとする名門大学と政府当局との間で繰り広げられた対立によって、これらの大学を含む研究機関への資金提供に関する懸念が生じている。
新学期を迎えた今も、高等教育の未来について数多くの疑問が残されている。こうした問題は、トランプ政権が数千件の外国人留学生のビザ(査証)の取り消しや制限に乗り出したことから、特に米国の大学に在籍する留学生にとっては差し迫った課題となっている。留学生のビザに対する脅威は、一流大学の収益にも影響を及ぼす可能性がある。専門家は、向こう数年間で米国の大学に留学する外国人が15~40%減少すると予測。留学生が減少すれば、米国人学生の学費に大きな負担がのしかかるだけでなく、ゆくゆくは全米の地方大学や中堅大学が閉鎖される恐れもある。
高等教育における政治的混乱の影響を受けたのは学生だけではない。教職員もまた、予測不可能な就労環境と向き合わざるを得なくなっている。高等教育に関するニュースを配信する米ヘッキンジャーレポートが6月に実施した調査によると、全米の少なくとも11州(うち7州は今年に入ってから)が、終身在職権を持つ大学教員に対する新たな審査基準を導入し、解雇を容易にするか、終身在職権の完全廃止を提案しているという。
1915年に米国で導入された終身在職権は長年にわたり、大学教員の表現の自由を保障し、信念や意見に基づく解雇から保護する措置として認識されてきた。ある議員がその廃止を求めた理由として、資金調達や納税者の負担を挙げたが、実際に廃止されれば、政治的異議を表明する大学教員には大きなリスクが生じる可能性がある。欧州連合(EU)諸国はすでに、急速に変化する米国の政策への対応策として、移住を希望する米国人研究者を積極的に誘致し始めている。



