5. ベンガルトラ(絶滅危惧)
主な分布域はインドだが、バングラデシュ、ネパール、ブータンにも生息するベンガルトラは、トラの現生亜種のなかで最も個体数が多い。それでも、野生個体数は約2500頭にすぎない。
文化的・国家的シンボルとして重視されてきたベンガルトラだが、一方で生息地の喪失、人間との軋轢、毛皮や体の一部を得るための密猟という深刻な脅威に直面しており、いまだに違法な野生動物市場で高値で取引されている。彼らの生存は、継続的な保全努力と、南アジア全域における生息地の連続性にかかっている。
(余談:ほとんどのベンガルトラは人間を避けるが、すべてではない。歴史記録にある限り最多の死者を出した「人食いトラ」は、400人以上の命を奪い、何年も駆除の手を逃れ続けた。事件の全容はこちらの記事で)

6. インドシナトラ(絶滅危惧)
東南アジアの密林に生息する知られざる亜種で、タイやミャンマーなどに分布する。かつてはベトナムやカンボジアでも見られたが、これらの国々では絶滅した可能性が高い。
インドシナトラの野生個体数は400頭未満で、プランテーションやインフラ開発による森林伐採、そして密猟の脅威にさらされている。残された個体の多くは、孤立した森林地帯に取り残されており、遺伝的多様性や繁殖機会の減少により、亜種の長期的存続が脅かされることへの懸念が高まっている。
7. マレートラ(絶滅危惧)
マレートラは、かつてはインドシナトラと同一視されており、2004年に遺伝的に独立した亜種として認められたばかりだ。マレー半島の熱帯林にのみ生息し、野生個体数150頭未満という危機的な状況にある。主な減少要因は密猟と、アブラヤシプランテーションによる大規模な森林破壊だ。
分布域の大半を占めるマレーシアは、国の象徴であるマレートラを救うため国家規模のプロジェクトを立ち上げたものの、緊急対策と長期的対策を実現しないかぎり、次に絶滅するのはこの亜種かもしれないと、保全関係者は警鐘を鳴らしている。



