スタートアップ

2024.05.10 08:00

バイオ業界に革新、新薬の動物実験で「並列化」に成功した米Gordian Biotechnology

木村拓哉
1927

Gordian Co-Founders Martin Borch Jensen(Left) and Francisco LePort(Right)(C)Gordian Biotechnology

バイオテクノロジーの研究者は、病気の新たな治療法を開発する際、手間のかかる2つのステップを踏む必要がある。まず、膨大な数の新薬候補を試験管の実験でスクリーニングする。その後、最良の候補を複数の動物でテストし、安全性と有効性を確認する。これらのプロセスには、多くの時間とコストを要する。

サンフランシスコに本拠を置くスタートアップ、Gordian Biotechnology(ゴルディアン・バイオテクノロジー)は米国時間4月26日、このプロセスを動物と人間の双方にとってより良いものにする新技術を開発したと発表した。同社が開発した動物スクリーニング・プラットフォームは、複数の遺伝子治療をたった一匹の動物で同時にテストすることを可能にする。この技術が革新的なのは、動物に遺伝子治療を施す際、従来のように体全体に影響を与えるのではなく、単一の細胞内で薬剤をテストできることだ。1匹のマウスで数百もの新しい遺伝子治療の評価を行うことができるため、より早く、より少ない動物でテストをすることができ、動物に危害を与えるリスクも低減できる。

「我々は、創薬プロセスの中で最も困難である動物実験を、並列化するプラットフォームを開発した」と、ゴルディアンのCEOであるフランシスコ・ルポートは話す。

38歳のルポートは、2018年に同年齢のマーティン・ボルク・ジェンセンと共にゴルディアンを設立した。2人は、ロシアのパン屋で知り合い、加齢に伴う病気を治療することを目指した会社を設立することを決めた。

Pitchbookによると、同社は現在までにFounders FundやGigafund、Horizons Venturesなどから6000万ドル(約93億円)を調達しており、評価額は1億7000万ドル(約263億円)に達している。

ゴルディアンのプラットフォームは、薬物スクリーニングに飛躍的な進歩をもたらす可能性を秘めている。研究者は長時間を要する実験室での薬剤スクリーニングを省略することができる。また、人間と疾患の生物学的性質が類似し、代用に適した動物をコスト効率よく使用することも可能だ。例えば、馬は人間と同じように加齢に伴い変形性関節症を発症しやすくなるため、この疾患のテストに適しているが、コストが高い。1つの治療薬のためだけにテストする場合はなおさらだ。

しかし、ゴルディアンの技術を使えば、研究者は馬の各関節に最大60種類の遺伝子治療をテストすることができる。さらに、ルポートによると、これらの遺伝子療法は生体に影響を与えることなくテストできるケースが多いという。
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編集=上田裕資

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