スタートアップ

2024.05.05 14:00

水素トラックの航続距離と積載量をディーゼル並みに、米新興Verneの挑戦

木村拓哉
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ボルボやダイムラー、ヒュンダイ、フレートライナー、ニコラなどのトラックメーカーは、排気ガスと温室効果ガスを削減するため、バッテリーや水素を動力源とする大型トラックの展開を始めている。先日は、米国環境保護庁がCO2排出を抑制する取り組みの一環として、2027年から大型商用トラックとバスのクリーン化を義務付ける新しい規則を発表した。しかし、EVトラックはディーゼル車よりもコストが高く、制限もある。

例えば、電動(EV)トラックは、非常に重く大きなバッテリー・パックを搭載しているため、ディーゼル車に比べて大幅に重くなり、6万ポンド(約27トン)の貨物を300マイル(約483キロメートル)以上輸送することができない。また、充電時間もディーゼルトラックを給油するのに比べてはるかに長い時間がかかる上、フリート業者は高価な充電ステーションに投資し、稼働させるために十分な電力量を確保する必要がある。

低コストで重量が軽い水素タンク

これに対し、水素トラックはそれほど重くなく、ディーゼルトラックより約1000ポンド(約454キログラム)重いだけだ。水素充填に要する時間も従来の給油と同等だが、燃料費は少なくとも2倍する。航続距離はバッテリートラックよりも長く、ニコラがカリフォルニア州で販売しているトラックは1回の充填で最長500マイル(約800キロメートル)走行することができるが、長距離ディーゼルトラックには劣る。

トヨタが販売するセダン型のMIRAIや、ニコラが販売する燃料電池トラックのトレなど、既存の水素自動車に使われているタンクは、プラスチックのライナーの周りにカーボンファイバーを何重にも巻いているため、重い上に1個当たり数千ドルもする。これらのタンクは、700bar(1平方インチあたり1万ポンド)という超高圧縮率で燃料を貯蔵するように設計されている。これに対し、ヴェルヌは水素ガスを冷却することで350barで貯蔵できるようにし、アルミニウムやスチール、または、はるかに少ない量のカーボンファイバーでできたタンクを使えるようにした。マクルヴィーンによると、同社のタンクは従来品よりも製造コストが安く、より多くの燃料を貯蔵できるという。

「必要なカーボンファイバーの量は75%ほど減る。また、高密度で水素を貯蔵することでタンクの数を6個から2個に削減できるため、貯蔵コストも下がる」と彼は語る。

ヴェルヌは、これまで乗用車にタンクを搭載した試験を行っており、今年中にはフルサイズのトラックに搭載する予定だ。2025年には、トラックのフリート業者によるテスト用に製品を供給する計画で、その後は複数のトラックメーカーへの供給を目指して商業運転の拡大に注力するという。

「我々の目標は、優れたティア1サプライヤーになることだ。我々は、バッテリーによる駆動が適さないような負荷の高いトラック向けの製品を提供するメーカーだ」とマクルヴィーンは語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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