新たなJホラー、「フェイクドキュメンタリー」はなぜ人気? テレ東で新番組

田中友梨
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大森:特にテレビでは、フェイクドキュメンタリーは比較的ローコストで注目を集めやすいので、これからも無限にやろうとする人が現れるはずです。そんな中で、僕も寺内さんと同じで、真剣に、逃げずにつくりたいという気持ちが大きい。演技やカットが決まっているドラマとは違って逃げようがあるからこそ、真剣にフェイクドキュメンタリーと向き合いたいと思っています。

皆口:自分はいちホラーファンとして、フェイクドキュメンタリーが増えるのは楽しいことだなとは思います。100本出れば100本観たいなって思っちゃう人間なので(笑)

大森:シーンが広がるのは明確にいいことですもんね!

最近はYouTubeのコメント欄に海外の方も多くて、90〜00年代に清水崇監督や中田秀夫監督が、海外でJホラーとして評価されたときと、またちょっと違う文脈で新たなJホラーがきていると思います。

近年Jホラーは韓国や東南アジアの作品にも押され気味で、それは欧米の人が「女神の継承」(タイ、2021年)のような湿度のある怖さにまだ触れたことがなかったことからだと思っているのですが。ただ、フェイクドキュメンタリーはそれとも違う新たなムーブメントを起こしうると思っています。

寺内:やっぱり演者依存ではないのが強みですよね。テレビでは特にキャストに有名な方を入れないと企画が通りにくい現状もあるなかで、大森さんはスタッフのブランディング化をしよう、という発想を持たれているからこそ実現しています。

大森:演者依存の作品は、点で見たら成果があるのですが、長い目で見たときにテレビ局に何が残るんだろうって思うんです。面白いものをつくれば、絶対に壁を越えていくはずだと信じています。

——「イシナガキクエを探しています」の見どころは?

大森:ネタバレになるので難しいのですが…僕は感覚的に見ていただいて面白いものになったと思っています。

寺内:そうですね。最終的にそっちに寄っていった気がします。なんか考察よりも感覚の方を優先していく運びというか。
「TXQ FICTION」より Ⓒテレビ東京

大森
:あと、2人はちゃんと論理や整合性がある“良いもの”をつくることを重視されているので、テレビの制作現場では「編集で繋ぎ直せばいい」と見逃すようなポイントも見逃さない。言語化しにくいのですが、そこに明確な差があります。自分自身も改めてその重要性を感じました。

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文=田中友梨 写真=小田光二 画像提供=テレビ東京

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