政治

2024.04.19 12:30

高齢化が進む米国の政界、老齢の政治家が支配する社会の問題

安井克至
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もちろん、政治指導者の高齢化が本質的に悪いわけではない。実際、高齢の政治家でも精神的に健康である限り、統治や立法は十分に可能だ。健康関連の情報を提供する米STATニュースによれば、知能の処理速度や詳細な記憶力といった技能は衰えるかもしれないが、年齢を重ねるにつれて感情の起伏が少なくなり、分別のある意思決定ができるようになるという研究結果もある。さらに、意思決定や問題解決を行う上で、時間をかけて蓄積された知識を統合する能力である「結晶性知能」も、年齢とともに増加する傾向にある。

また、認知機能は人によってばらつきがある。80歳の人が皆同じというわけではない。ここでは「年齢は単なる数字に過ぎない」と言った方が良いかもしれない。米ハーバード大学医学部が運営する健康情報サイト「ハーバード・ヘルス」によると、70代~90代の中には実年齢より若い認知機能を保っている人もいるという。先述の高齢化した米政界幹部の中にも、こうした人たちがいるかもしれない。継続的な身体運動や精神的な刺激、社会的なつながりなどが脳の働きを保ち、実際の年齢より若々しくあることにつながるのだろう。

他方で、65歳を超えると認知機能の柔軟性が低下する傾向にあることも、研究によって示されている。さらに不安をあおるのは、60歳を過ぎると実行機能が大幅に低下するという事実だ。ここでいう実行機能とは、学習や仕事、日常生活を管理する上で必要な作業記憶や柔軟な思考力、自制心といった一連の能力を指す。意思決定は実行機能に不可欠な要素であり、政界の首脳や権力のある立場の人にとっては特に重要な能力だ。程度の差こそあれ、65歳以上の多くの人に実行機能障害があるという。

だが、知的能力や実行力の衰えより重要なのは、指導者の高齢化が進むことで、政治体制の代表性に問題が生じ得ることだろう。政治学では、高齢者が統治する「長老政治」は通常、その国の国民全体を代表するものではないと考えられている。

こうした背景から、米国の政治家の高齢化は、今年の大統領選挙が終わっても熱い議論の的であり続けるものとみられる。同国の上層部も、恐らくいつかは欧州のような政界の若返りに向けて道を譲ることになるだろう。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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