政治

2024.04.16 10:00

「価値が下がった円」はバイデン政権の2024年を一層厳しいものにする

安井克至
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中国が、5%という2024年の経済成長率目標達成に苦労し、不動産危機が悪化し、デフレ圧力が強まるのにともない、中国経済は、手に入るものならどんな助けでもほしい状況にある。GDPを押し上げたいなら、輸出を後押しする人民元安以上に手っ取り早いものはないだろう。

もちろん、リスクはたくさんある。為替レートを下げる操作をすれば、不動産開発業者の外国での債務支払いが厳しくなり、債務不履行のリスクが高くなるかもしれない。人民元の信用構築における進歩が無になる可能性もある。米国の共和党にも民主党にも、中国を叩く理由ができる──しかも、今年は大統領選挙の年だ。

とはいえ、円が下落すれば、習は、先例に習う以外の選択肢はほとんどないと考えるかもしれない。中国が通貨安に方向転換したら、ワシントンから東京までの当局者がパニックになるだろう。バイデン政権下のジャネット・イエレン財務長官も、厳しい立場に置かれることになる。

同盟国の日本がしているのとまったく同じことを中国がした場合、米当局はそれを批判できるだろうか? 中国の為替操作に報復措置をとりながら、日本は為替操作などしていないというふりをする。そんなことを、米財務省はいったいどうすればできるのか?

答えは、いうまでもなく、岸田政権が円高を受け入れることだ。日本政府はさらなる円安を望まないと発言するだけでは足りない。大胆かつ透明な施策により、為替レートを押し上げなければならない。そうすればおそらく、信頼感のようなものが生まれ、それがグローバル投資家の心に響くかもしれない。

バイデンが賢明であれば、岸田との首脳会談で、この問題に時間を割いたはずだ。この問題がわだかまる時間が長くなればなるほど、「日本版ペソ」に刺激された中国が、グローバル市場を引っくり返す行動をとるリスクは大きくなる。そして、2024年が先へ進むにつれて、どこのトレーダーたちも神経をとがらせることになるだろう。

forbes.com 原文

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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