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2024.04.03 08:30

高級ブランドの国際空港への出店急増、旅行者の購買意欲を反映

木村拓哉
1955
だがこうした動きは北米に限ったことではない。オランダ・アムステルダムのスキポール空港のラウンジ2にはブルガリやルイ・ヴィトンといったブランドが店舗を構えており、国際線を利用する旅行者向けの高級小売を強化しようと大規模な改装が行われている。

イタリア・ローマのフィウミチーノ空港も、空港デビューとなったゴールデン・グースやツインセットを含む14の高級ファッションブランドの店をオープンさせ、高級小売を強化した。

こうした変革的な試み、旅行小売市場が力強い成長を遂げようとしているのも後押しとなっている。同市場の規模は2023年の792億4000万ドル(約12兆円)から2024年には904億1000万ドル(約13兆7100億円)に拡大すると予測されている。年平均成長率は14.1%だ。

だが、空港出店の動きは事業拡大を狙っているだけではない。ベンチャーキャピタル会社Hannah Grey(ハンナ・グレイ)のチーフ・ブランド・オフィサーであるマイケル・ミラフローは、高級ブランドにとって国際空港は富裕客の注意を引く絶好の場だと考えている。

「現実的な観点からいうと、航空会社は国際線利用者に搭乗の数時間前に空港に到着するよう促している。そして空港ではラウンジを利用する以外にすることはさほどない。買い物はうってつけだ」とミラフロー。「また、海外旅行は散財するものと考える多くの旅行者にとって、心理的に空港での高級品の買い物は正当化しやすいかもしない」

こうした感情と併せて、高級ブランドは空港に出店することで、高級ブランドの実店舗に入ることに抵抗を感じる若い買い物客とつながる貴重な機会を得ている。

「Z世代以降の消費者は、従来の実店舗ではなく、より手軽でいつでも利用できるオムニチャネルで買い物する」とネット広告事業などを展開する中国Hylink Group(ハイリンク・グループ)の最高戦略責任者(CSO)のユクン・ビは指摘する。「空港はこのような若い消費者にとって、ブランドの店舗に入って実際に商品を手に取る最初の機会となるかもしれない」

ビはさらに、高級小売にとって空港は今後、ポップアップ店を設置するなど革新的なエンゲージメント戦略を通じてさらに成長する機会を得る場となると説明する。例として、シンガポールのチャンギ空港やシンガポール航空のマイレージプログラム「クリスフライヤー」の会員向けのラウンジを挙げる。そこではビジネスクラスやファーストクラスを利用する富裕客をターゲットに、ブランドが商品や季節のアイテムを展示する専用のポップアップスペースが提供されている。

新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)以降、世界中の空港が小売サービスの調整を続けている中、高級小売は世界の旅行者を引きつけて、巨大な市場シェアの一部を獲得するチャンスを手にしている。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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