働き方

2024.03.26

「ジェーン・スーはアバター」人生相談のプロが語る仕事との付き合い方

ジェーン・スー|コラムニスト、ラジオパーソナリティ

Forbes JAPAN 2024年5月号は、「『最愛の仕事』の見つけ方」特集。自律的なキャリア形成へと世の流れが移る今、画一的なロールモデルは存在しない。各分野の第一線で活躍する人物・識者たちへの総力取材を通じて、自分だけの答えを見つける手がかりを提示する。

雑誌や新聞では人生相談をテーマにした連載のコラムをもち、2016年に始まったTBSラジオ「生活は踊る」では番組に寄せられた2500件近くのお悩み相談にこれまで答えてきたジェーン・スー。Podcast番組「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」では、「おばさんあるある」話を繰り広げたり、リスナーからのお便りを読んだりとふたりの軽快なトークに元気づけられる人も多く、月間リスナーは80万人以上に達する。

老若男女を虜にするお悩み相談のプロである彼女に、価値観が多様化し、正解がないこの時代に自分らしく「働く」ための心得を聞いた。



ジェーン・スー:SNSなどで質問を募集すると、若い方も中高年もとにかく「将来が心配」っていう声が多いですね。この数年で働き方の選択肢が増えて、そのなかで自分らしさみたいなものがより問われるようになって。そうすると、自分に合う働き方って? 自分らしい生き方って? って悩むようになる。自由と不安はセットなんですよ。

私は目標もないし、行き当たりばったりでも不安を感じないタイプですが、慎重な人ほど、将来の心配をしてしまう。でもそういう人は慎重だからこそ大きな間違いも起こさない。不安が危機管理能力として作用しているから、不安であることは悪いことじゃない。

カタカナは「全部嘘」

〇〇ハックとかタイパ、コスパとかいろいろなカタカナをよく聞きますが、そういったテクニックを駆使するような働き方は、自分らしさを見失う危うさがあると思うのです。自分にとって何が損なのか得なのか、自らの価値観の設定が曖昧だと、結局どうすればいいの、って悩んでしまう。

ウェルビーイングとかワークライフバランスとか、新しく出てきたカタカナは全部嘘!新しい価値観に振り回されるくらいなら、思い切ってそれくらいにとらえていいと思う。都合がいいと思ったことだけ取り入れて、自分の価値観とは一定の距離をとる。

私が地方の自治体からの依頼で日本全国の講演会に行って話すのも、タイパコスパで考えるとかなり悪いですよ。でも、何が「パフォーマンスがいい」とするかは人それぞれで、私にとってそれは「面白いことをすること」であって。この間も沖縄に日帰りで行って講演してきましたが、私に興味をもってくれているのってどんな人なんだろうってワクワクしていました。実際に足を運んで、直接顔を見て話せるほうが、短時間でギャラのいい仕事より面白い。

ワークライフバランスなんていいますが、私は仕事とプライベートのバランスめちゃくちゃです。でもいいんです、楽しいので。大事なのは自分の働き方を他人に強要しない。私みたいに仕事ばかりで平気な人もいれば、生活に重きを置いている人もいる。いろいろ試して、自身の好き嫌いや損得を考えることが、自分らしく働いていく、ということにつながるのだと思います。

周りの考えや評価に振り回されないためにも、仕事ではもうひとりの自分をもつ感覚って大切。私の場合は自分の人格と仕事がくっつかないように、アバターが働いている感じ。自分の言うことをいちばんよく聞くのがジェーン・スーっていうアバター。偽名な分、それはやりやすくていいですね(続きはForbes JAPAN 2024年5月号で)。


ジェーン・スー◎1973年、東京都生まれの日本人。レコード会社に就職後、二度転職し、独立。SNSに書いていた日記がきっかけとなり雑誌でコラムを書くように。著書に『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)など。

文=川上みなみ 写真=小田駿一

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年5月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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