キャリア

2024.03.15 09:00

「卵子凍結」を民間保険で後押し キャリアで迷う女性に選択肢

稲垣 伸寿
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東京都の助成制度で「卵子凍結」に高い関心

「卵子凍結」は健康保険の適用外の医療技術のため、全額が自費診療となり、金額も医療機関によって異なる。卵巣を刺激し、診察、採卵、凍結といったステップを踏む際の費用は、1回1周期あたり30万円~100万円程度となるケースが多い。凍結保存を延長するには、さらに更新料も必要となってくる。

「卵子凍結」に対する費用の助成は、これまで企業が福利厚生のひとつとして従業員向けに実施したり、がん患者を対象に地方公共団体が実施したり、といった形で後押しされるケースはあった。しかし、近年、「卵子凍結」の話題や報道が頻繁に飛び交うようになった主な要因は、東京都による助成が挙げられる。

以前はがん患者を対象としていた「卵子凍結」の助成について、東京都は2023年度から一般女性まで対象を拡大した。そのニュースは当然に話題を呼び、説明会には9000人超の応募者が殺到した。想定を上回る反応を受けて、東京都は2024年度の予算拡充を決めたという報道も先日流れたばかりだ(図表2)。

出典:東京都福祉局ホームぺージ       ( https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/ranshitouketsu/touketsu/6nenndo.html )をもとに筆者作成

出典:東京都福祉局ホームぺージ( https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/ranshitouketsu/touketsu/6nenndo.html )をもとに筆者作成

しかし、東京都に住んでいる女性が「卵子凍結」を希望したとしても当然に全員が助成を受けられるわけではなく、他の自治体に住んでいるのであれば公的助成はまだ期待できない状況だ。現段階で「卵子凍結」を望むなら、費用は自分で準備するのが基本となる。

さらなる保険商品の投入に期待

公的な保障や助成が手薄い事柄については貯蓄で備えるのが基本だが、その貯蓄でも足りない場合は「保険」の活用が合理的となる。

例えば、不妊治療に関しては、このコラムの過去記事(「不妊治療の公的助成に拡充の動き。民間の「不妊治療保険」も有効か?」)で取り上げたように、民間の保険も少しずつ増えてきている。

だが、「卵子凍結」に関しては、ピンポイントでカバーする個人向けの民間保険はこれまでのところ見当たらなかった。

そんななか「卵子凍結」に関わる保険が2024年4月より登場する。三井住友海上火災の「凍結卵子専用保険」という保険で、凍結卵子の保管サービスを手がける会社である「LIFEBANK」の「卵子バンク」の利用者向けに提供される。
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