働き方

2024.01.14 16:00

仕事の話が「2人の関係」を悪化させる? 兆候と対策をチェック

日下部博一

Getty Images

上司の辛辣なコメントが頭の中でリピートし、パートナーに今言ったことをもう一度言ってもらったりすることはないだろうか。あなたは仕事について「反芻」しているのかもしれず、さらに悪いことに、それが2人の関係をむしばんでいるかもしれない。

幸福に関する学術誌『Journal of Happiness Studies』に昨年掲載された研究では、「ワーク・ルミネーション(仕事について反芻すること、いわば仕事のフラッシュバック)」がカップルの関係に及ぼす影響を考察している。ワーク・ルミネーションとは、仕事をしていない時でも、職場で起きた出来事や問題、仕事に関連して考えたことなどを延々と考えてしまう傾向を指す。

仕事の話を繰り返しているうちに、仕事を巡る問題から精神的に自由になれなくなってしまうことがある。例えば、帰宅後もパートナーを相手に、職場でのやりとりや出来事を繰り返し話したり、業務でおこなった行動や判断をしきりに分析したりする。そして、こうしたワーク・ルミネーションによって、パートナーに向ける注意力が低下し、結果的にはパートナーとの関係の質に悪影響が及んでしまうと、研究者らは述べている。

その一方で、パートナーを相手に仕事の話をすれば、それが大事な心の支えとなり、ワーク・ルミネーションを克服しやすくなる場合もある。つまり、終業後に仕事と感情的にどう関わるか、うまくバランスをとる必要があるわけだ。

この記事では、ワーク・ルミネーションがパートナーとの関係に影響を及ぼしていることを示す兆候を2つ挙げ、その対処法を紹介したい。

1. 仕事の話ばかりしている

ワーク・ルミネーションがパートナーとの関係に影響を及ぼしていることを表す最も顕著な兆候のひとつは、パートナーと交わす会話の内容が仕事のことばかりになってしまうことだ。社内の駆け引きをあれこれ話したり、仕事のストレスをぶちまけたり、業務上の難題を細かく分析したりなど、カップルの一方が仕事関連の話題へとしきりに話をもって行こうとしていると、個人的な事柄を打ち明けたり親密な会話を交わしたりする余地がほとんどなくなり、2人を結びつける心の絆が揺らいでしまう。

研究者らによれば、くつろいだり親密なひとときを過ごしたりするための時間であっても、人の心は仕事の問題に固執してしまうことがある。その原因は「認知負荷」だ。人の持つ注意力は限られているため、仕事関連の思考が注意力の容量を使いすぎてしまうと負荷がかかってしまうのだ。仕事量が多ければ、なおさら認知負荷が起こりやすくなる。

選択的注意の負荷理論にもとづく研究者の説明によると、仕事関連の思考は(それがポジティブなものであろうとネガティブなものであろうと)、1人の人間が有する限られた心的リソースを奪い合い、他の人や物事に差し向ける注意力が低下してしまう。その結果、カップルの関係性に対する満足度も低下しまうのだ。

そうしたワーク・ルミネーションが起こる時間は、カップルが1日のなかで唯一、じかに顔を合わせられるタイミングと重なることが多い。そのため、限られた心的リソースを、仕事と私生活が奪い合わざるを得なくなる。そして、関わり合う時間の多さだけでなく質にまでも悪影響が生じ、パートナーとの充実した関わりや、建設的で愛情に満ちたやりとりが犠牲になってしまう。

この研究によると、カップルのどちらかが仕事に関する話をあまり話題にしなかった日は、パートナーに向けてより多くの注意を払うことになり、自分たちの関係に対する満足度が両者とも高くなったことが確認されている。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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