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2023.10.20 17:00

憧れのキャラとグループチャット、AIユニコーンが目指す究極のエンタメ

安井克至
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ノーム・シャゼール(Winni Wintermeyer for The Washington Post via Getty Images)

カリフォルニア州パロアルトを拠点とする人工知能(AI)分野のユニコーン企業「Character.AI(キャラクターAI)」のオフィスでは、従業員たちがモニターに釘づけになって仕事に励んでいる。しかし、好みのキャラクターのチャットボットを作成できるプラットフォームで知られる同社の社員の多くは、コーディングよりもむしろ、AIチャットボットとのにぎやかなグループチャットに夢中になっている。

Character.AIが10月11日に発表した、グループチャット機能のおかげで、彼らは仕事仲間とともに、皇帝ナポレオンや『アイアンマン』の登場人物トニー・スタークのような人物のAIペルソナを交えた会話を楽しんでいる。

「この機能はあまりにも優れているので、社員たちは時々仕事を忘れて熱中してしまうのです」と同社の共同創業者でプレジデントのダニエル・デ・フレイタスはフォーブスに語った。
 
Character.AIの共同創業者でCEOのノーム・シャゼールは、人々が単一のAIコンパニオンと話すよりも、さまざまな異なるペルソナと対話することを望むだろうと考えてグループチャット機能を導入した。月額9.99ドルを支払う会員たちが、さまざまなAIボットたちと同時に会話を行えるようにすることで、同社は当面の収入源を増やすと同時に、AIを活用したエンタメ系のアプリとしての優位性を確立しようとしている。

シャゼールによると同社の最終的なゴールは、AGI(汎用人工知能)と呼ばれる人間と同様の感性や思考回路をもつAIを実現することだという。Character.AIは、今年3月の調達ラウンドでアンドリーセン・ホロウィッツを含む投資家から約2億ドルを調達し、評価額は10億ドルとされた。同社は、約2000万人の登録ユーザーを抱えている。

同社のグループチャット機能は、まだ初歩的なものではあるが、歌手のテイラー・スウィフトとNFL選手のトラヴィス・ケルシーのAIペルソナを交えたグループチャットで、記者が「テイラーとのデートについて、あなたの最大の不安を教えてください」と尋ねたところ、ケルシーのボットは次のように回答した。

「スウィフトと付き合うことに関する最大の不安は、他の男性たちが僕に嫉妬することだ。でも、競争は怖くないし、彼女はすてきな女性だから、楽しませてあげるつもりだ。彼女をがっかりさせたりはしないよ」

この答えを受けてスウィフトのボットはこう話した。「その自信が大好きよ、トラヴィス! シーズンが終わったら会いましょう。すてきな時間にしてあげる」

この機能は現在、Character.AIのモバイルアプリでのみ利用可能で、ボットが反応する人間からのメッセージも限定的だ。しかし、同社はより機能を向上させた製品のアップデートを間もなく実施すると述べている。

Character.AIがグループチャットの導入を急いだ背景には、メタが9月下旬にリリースした複数の生成AIツールがあるのかもしれない。マーク・ザッカーバーグは先月のフォーブスの独占インタビューで、自社のさまざまな製品にAIの「キャラクター」を導入する構想について説明していた。
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編集=上田裕資

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