ヘルスケア

2023.09.19 10:00

「パンデミック候補」のニパウイルス、インドで死者 知っておくべきこと

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ヒトからヒトへも感染する?

米疾病対策センター(CDC)によると、過去のアウトブレイクではヒトからヒトへの感染も報告されている。最も多いのは感染者の家族や看護者らにうつるケースだった。

ウイルスの種類としては、麻疹ウイルスやムンプス(流行性耳下腺炎、おたふくかぜ)ウイルスと同じグループに属する。

どんな症状が出るのか

症状はまず、発熱や頭痛のほか、せきなど呼吸器疾患の兆候が表れることが多い。その後、急速に悪化して脳炎や発作を起こし、1日か2日で昏睡(こんすい)状態に陥ることもある。

WHOによると、ヒトの場合、症状は感染後数日から2週間の間に出るのが一般的だが、発症までに45日かかった例もあるという。潜伏期間中にヒトからヒトへ感染する可能性もあるとする研究もある。WHOは、ブタの場合、潜伏期には「感染力が高い」と指摘している。

WHOによると、ヒトが罹患した場合の致死率は40〜75%と推定される。数字は現地の医療体制などによって変わってくる。脳炎から回復した患者では、発作や人格変化といった長期的な神経症状も報告されているという。

ワクチンや薬は?

ヒトに対しても動物に対しても、ニパウイルスに対する使用が許可されているワクチンや薬はない。現時点で患者への処置は対症療法に限られる。

CDCによると、モノクローナル抗体を用いる免疫療法が初期段階の臨床試験(治験)に入っている。ほかの病気の治療でヒトに使われている抗ウイルス薬「レムデシビル」は、動物を使った実験で、ニパウイルスへの曝露(ばくろ)後に投与した場合も有効性が示された。

オーストラリアでは、ニパウイルスの近縁であるヘンドラウイルスのウマ用ワクチンが販売されており、ニパウイルスへの感染に対してもある程度の予防効果があるようだ。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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