「地上資源」でNYSE上場へ 世界中の企業が提携を求める「希望の星」

Forbes JAPAN編集部
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「新たな惑星」がヒト、モノ、カネを呼ぶ

米アップルがiPhoneを発表したとき、「日本企業の部品を多く使っているから、日本の企業にも同様の製品がすぐにつくれる」という声が上がった。しかし、アップルはiTunesやApp Storeというプラットフォームを運営し、開発者たちが参画しやすいような仕組みとマーケットを整備して差別化を図った。音楽レーベルやミュージシャンと契約や著作権について粘り強く交渉し、サブスクのApple Musicを提供。消費者の気持ちを引きつけている。

多角的な取り組みを展開しているJEPLANだが、同じような「消費者目線」で考えているから経営視点がブレることはない、と岩元は断言する。「消費者が最もリサイクルしたいものを技術開発でやらないと、消費者の目が向いてくれません。我々が多様なものを循環させるのは、消費者のニーズに応えているだけなのです」(岩元)

出荷を待つ再生PET樹脂が詰まった袋を前に。岩元着用のジャケット、Tシャツ、ジーンズすべてBRING製。環境への企業姿勢=ブランドとして世代を問わず支持される時代は日本に来るか。

出荷を待つ再生PET樹脂が詰まった袋を前に。岩元着用のジャケット、Tシャツ、ジーンズすべてBRING製。環境への企業姿勢=ブランドとして世代を問わず支持される時代は日本に来るか。


循環型社会を早く到来させるためにも、消費者にリサイクルを“自分ごと”にしてもらう必要がある。だから、消費者の行動変容を図るべく、岩元はあの手この手のマーケティング活動を行っている。15年からは綿からつくったバイオエタノールで実車を走らせるイベントも実施している。米映画会社ユニバーサル・スタジオに「循環型社会をつくる取り組み」という名目で協力を仰ぎ、同社公認で、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』でデロリアンが未来(2015年10月21日)に到着する場面を“再現”した。こうした試みや働きかけによって消費者の意識が変わり、メーカーや小売業者にとっても、より積極的に循環型社会にかかわるインセンティブが生まれるのだ。

「循環型社会の実現」という強力なメッセージは、国境を越えたビジネスにつながる。ユニバーサル・スタジオ本社がJEPLANに共鳴したように、海外の有名企業や数々のブランドとの提携が、国内におけるJEPLANの信用と認知の向上につながっている、と岩元は話す。一方で、仏国営企業Axens(アクセンス)との提携は、世界におけるPET商用プラント事業の展開を促している。各業界のリーダー企業と提携することで、ほかの企業からの信頼も得やすくなる。海外の投資家は、こうした“巻き込み力”を評価していると岩元は話す。

23年5月、再生プラスティック取引市場の国際展開を担うUAE拠点のRebound社とPETケミカルリサイクルプラント建設に向けた提携を発表(左端が高尾社長)。UAEは11月のCOP28開催国。

23年5月、再生プラスティック取引市場の国際展開を担うUAE拠点のRebound社とPETケミカルリサイクルプラント建設に向けた提携を発表(左端が高尾社長)。UAEは11月のCOP28開催国。


「海外の投資家の場合は、今日の利益よりも10〜20年後の循環型社会について考えます。ある投資家のかたには、『君たちは惑星をつくったな!』と言われましたよ。その惑星の重力に、ヒト、モノ、カネ、情報までも吸い込まれていく。大事なのは、目先の売り上げや利益ばかりを追うのではなく、それらが集まる『新たな惑星』をつくることなのです」

岩元と高尾がJEPLANで目指したのは、地下資源から解放された、地上資源で回る循環型社会が完成した地球だった。その過程でブルーオーシャンに満ちたもうひとつの“惑星”を見つけたのだ。

岩元美智彦◎1964年、鹿児島県生まれ。88年北九州大学(現北九州市立大学)卒業後、繊維専門商社に就職。営業職に従事する。95年「容器包装リサイクル法」の制定を機に繊維リサイクルに深く携わる。2007年に現社長の高尾正樹と共同で日本環境設計(現・JEPLAN)を創業。15年アショカ・フェローに選出。16年より取締役執行役員会長。



「Forbes JAPAN 2023年9月号」の本記事掲載時、「東京ドーム1個分」を「東京ドーム15個分」と記載する誤りがございました。関係者並びに読者の皆様に謹んでお詫びいたします。

文=フォーブスジャパン編集部 写真=池田直人

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年9月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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