「地上資源」でNYSE上場へ 世界中の企業が提携を求める「希望の星」

Forbes JAPAN編集部
6085
彼はJEPLANの形態を「総合商社」にたとえる。同社が多角的な事業運営をしている理由を知るには、岩元と高尾が会社を立ち上げた16年前にさかのぼる必要がある。

服を原料にクルマが走る“妄想”

岩元がリサイクルについて考えるようになったきっかけは、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』(1989年)だった。ゴミを燃料に動くクルマ型のタイムマシン「デロリアン」を見て、岩元は「未来にはゴミが資源になる。そして、それを実現するのは日本のテクノロジーだ」と確信した。 

 映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズに登場したデロリアン。未来編のPART2はゴミが燃料。 2015年のイベントでは映画同様、回収衣料品をJEPLANが燃料にリサイクルして実車を走らせた。

映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズに登場したデロリアン。未来編のPART2はゴミが燃料。 2015年のイベントでは映画同様、回収衣料品をJEPLANが燃料にリサイクルして実車を走らせた。


その思いは、就職した繊維商社で強くなる。彼は、衣類がゴミ全体に占める割合に疑問をもっていた。繊維製品のリサイクルは技術的に難しく、20%程度がリユースやリサイクルに回されるものの、残りの80%は埋められるか、焼却されてしまう。大量につくられ、使われ、ゴミになっておしまい、という一方通行になっていた。

すると06年のある日、新聞を読んでいると、トウモロコシからバイオ燃料となるエタノールを製造できることを知った。同じ植物の綿からできた服からもバイオエタノールができるのではないか。それなら、使い古したTシャツを燃料として販売可能な「資源」に変えられる─。そう考え、東京大学大学院に在学中だった若き飲み友達の高尾に相談してみた。

岩元はJEPLANのビジョンを語るとき、“妄想”という言葉を使う。「服を原料に、クルマを走らせ、工場を動かし、飛行機を飛ばす燃料をつくれるのではないか」。いろいろな人に自分の妄想を語っては賛同してくれる仲間を募り、それぞれの得意分野を生かしながら一緒にかたちにしていくのだ。

高尾はそんな妄想に付き合ってくれた最初のひとりだった。そして大阪大学の協力のもと、ふたりは綿100%のTシャツを分解(糖化)してバイオエタノールをつくることに成功。岩元は陽気に、「『100万円あれば会社はつくれる』と言って会社を立ち上げましたからね。まあ、はたから見ると変人ですよ(笑)」と、起業した経緯について語るが、高尾社長は「深く考えた記憶はない」と断りつつ、ビジネスとしての可能性を感じていたと明かす。「ユニホームリサイクルに関する事業展開に関連して、今後ビジネスとして拡大する可能性を感じ、面白そうだ、と思ったことに尽きます」。

その予想通り、JEPLANは綿製品からバイオエタノールをつくる発想と技術に始まり、ポリエステル繊維からポリエステル繊維を再生、PETボトルからPETボトル樹脂を再生という具合に事業を拡大してきたのだ。

リサイクルの輪を回転させる「軸」に

しかし、JEPLANがここまで成長できた理由は「技術」だけではない。同社の最大の強みは、岩元と高尾が描く「あらゆるものを循環させる」というビジョン、つまり「完全な循環型社会の到来」を実現するべく、自分たちもリサイクルの過程にかかわりながら、他者を巻き込み、一緒にかたちをつくり上げていく点にある。これは、従来のリサイクルの理想と現実について考えた結果、彼らがたどり着いた、一見、不可能ながら最も現実的な解決策でもあった。

リサイクルは通常、1.メーカーが製品をつくり、2.それを消費者が購入する、3.不要になったものを捨てずに資源に変えて再利用、という流れである。メーカーは法令やCSR(企業の社会的責任)の観点から何かしらの施策を打つことが多いが、実は、使わなくなったものをメーカーや小売店に戻す、という消費者が果たすべき役割のほうが大きい。だから企業同士(B2B)の活動に、消費者(C)が参加するB2B2Cの構図が成立しないことには、完全な循環型社会にはならないのだ。だが、現実には「回すのが難しい」と岩元は語る。どこでつまずくのか?
次ページ > 回収の動線をつくることこそ、最も重要なポイント

文=フォーブスジャパン編集部 写真=池田直人

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年9月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事