カルチャー

2023.06.13 09:30

米国、ユネスコに復帰へ 10年余りの確執に幕

遠藤宗生
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Bumble Dee / Shutterstock.com

米国が、ドナルド・トランプ政権下の2018年に脱退していた国連教育科学文化機関(ユネスコ)に再加盟することが決まった。反イスラエルに偏向しているとの懸念から、同機関との間で10年余りにわたり続いていた確執が解消する。

AP通信によると、リチャード・バーマ米国務副長官は8日、ユネスコへの書簡で、再加盟の意向を表明。ユネスコは12日、米国が6億ドル(約840億円)以上を支払い同機関に再加盟すると発表した。

米当局者は、再加盟の目的の一つは中国の影響力抑制にあると説明。ジョン・バス国務次官は3月、「われわれが中国とのデジタル時代の競争について本当に真剣に考えているならば、もはや不在であり続ける余裕はない」と述べていた。バーマ副長官は書簡で、再加盟の理由として、ユネスコの内部改革と「特に中東問題に関する政治化された議論の減少」を挙げた。

米国とイスラエルは2011年、パレスチナのユネスコ加盟を受け、同機関への出資を中止。2018年には同機関から正式に脱退した。米当局はその理由について、ユネスコの内部改革を促進させ、分担金の滞納増加に歯止めをかけるためと説明していた。

ユネスコのオードリー・アズレ事務局長は、2017年に選出されて以来、米国との関係修復に邁進。ジョー・バイデン大統領は就任時、ユネスコ再加盟を約束していた。米国は来月の投票で、193加盟国の承認を得て正式に再加盟する見通し。

アズレ事務局長は12日に出した声明で、米国の決定を「ユネスコと多国間主義に対する強い信頼」を示すものと歓迎。AP通信に対し、「この5年間で、中東などをめぐる緊張を緩和し、現代の課題への対応を改善し、主要な取り組みを再開し、組織の機能を現代化してきた結果だ」と述べた。

ユネスコは、世界各地の世界遺産を指定する組織として広く知られているが、それ以外にも女性の平等やホロコースト教育など、文化、科学、技術、環境、人道、歴史保存の諸問題にも取り組んでいる。NBCニュースによると、運営予算5億3400万ドル(約746億円)のうち、米国が脱退前に拠出していた割合は22%で、米国の不在が財政的に悪影響を及ぼしてきた。

forbes.com 原文

翻訳=上西雄太・編集=遠藤宗生

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