経済・社会

2023.04.07 11:45

テスラ社員が顧客の動画を「盗み見」、元従業員らが証言

安井克至
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franz12 / Shutterstock.com

テスラの元社員らが、車両の内蔵カメラで撮影されたオーナーの私的な写真や動画が、従業員の間で幅広く共有されていたと証言したことを、ロイターが4月6日に報じた。

記事によると、2019年から2022年にかけてテスラの社内で、顧客の裸や子どもの姿を含むオーナーの私的なイメージが社内のメッセージシステムを通じて共有され、時には居場所が明らかになるものもあったと9人の元従業員が証言したという。

また、共有された画像や動画の中には、オーナーの犬や奇妙な道路標識などの画像を従業員がミームに加工したものや、テスラが自転車に乗った子どもに衝突する場面や危険な運転行為を収めたものがあったという。これらのイメージは、多数の従業員が確認可能な状態だったという。

テスラのカメラは、運転中の事故を記録するだけでなく、道路標識や信号、道路上の障害物などを認識することでオートパイロットやオートパーク機能を作動させることを目的としている。

同社はまた、数百人の労働者を雇い、車載カメラが撮影した写真にラベルをつけて、クルマのシステムが一般的な障害物を認識できるようにしており、その結果、従業員がこれらの記録にアクセスできるようにしている。

同社のウェブサイトで、ダッシュカムと呼ばれるカメラは、電源が入っているときに限って車両の周囲の映像を記録すると説明されているが、元従業員の1人はロイターに対し、一部の録画データは、クルマを駐車して電源をオフにした状態で撮影されたように見えると述べている。

テスラはプライバシーポリシーにおいて、運転によって生成される車両データとドライバーの身元を関連づけることはなく、位置情報や顧客の行動を外部と共有しないことを顧客に保証している。テスラのオーナーは、データの共有に同意した上で、カメラの記録を同社と共有している。ただし、顧客が同意した場合でも、録画は匿名性を保たれ、個人と紐づかないことになっている。

「盗難防止カメラ」も論争に

テスラのハイテク録画機能は、過去に国際的なプライバシーに関する懸念を引き起こしたことがある。車両の周囲を監視し、盗難や破壊行為から守るための「セントリーモード(sentry mode)」システムは、プライバシー侵害につながる可能性があるとして、論争の中心となっている。

テスラは4日、ドイツの消費者団体VZBVが広告にこの違反の可能性を記載していなかったとして同社を提訴した後、セントリーモードがデータプライバシー法を侵害する可能性があると警告し、中国の一部の地域ではこの機能が禁止された。

一方、オランダのデータ保護機関は、2月にセントリーモードの使用はクルマの所有者の責任であり、会社の責任ではないと結論づけ、テスラが録画システムを人々に警告する機能を展開した後に、同社を処罰しないことを決定した。

今回のロイターの記事は、元従業員の証言によるものであり、このようなプライバシー侵害が現在も続いているかどうかは不明だ。テスラはフォーブスのコメント要請に応じなかった。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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