CDCが新たに発表した査読済みの論文によれば、この研究で分析したのは、どちらもワクチンの安全性を監視するためのシステムとして運用されている「ワクチン有害事象報告システム(VAERS、ヴェアーズ)」と、「V-Safe(ブイセーフ)」に入力されたデータ。
調査の対象期間とした2020年12月~2021年6月までの6カ月間には、VAERSにはおよそ34万件、v-safeにはおよそ400万件の有害事象が報告されていた(いずれも自己申告)。
これらのうち半数近くが、ワクチン接種後の副反応の報告だった。最も多かったのは、倦怠感、頭痛、接種部位の痛み、悪寒の訴えで、2回目の接種後に報告した人の方が多かった。また、副反応のために医療機関を受診した人は、1%未満だった。
この6カ月間に、米国ではワクチン接種を受けたおよそ4500人の死亡が報告された(緊急時使用許可を得たワクチンの接種を行う医療機関には、接種後に死亡した人について報告することが求められている)。また、この6カ月のうちの最初の数カ月間に、国内では約3億回の接種が行われていた。
研究チームは分析の結果として、接種後の死亡とワクチンを関連づける証拠はないとの見方を示している。接種後に死亡した人の80%以上は60歳以上で、「ベースラインの死亡率がもともと一般人口よりも高い」グループだった。「成人向けのその他のワクチンの接種後の死亡率と、同じようなパターンが示されている」という。
すでに相当数にのぼる研究によって、新型コロナウイルス向けに実用化されたメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの安全性を示す証拠が確認されている。接種を受けた人は、感染する確率も、感染後に入院、重症化、または死亡する確率も低くなっていることが報告されているほか、感染後に長期にわたって続く後遺症に悩まされる確率も低いとされている。
新型コロナウイルスに感染した場合のこうしたリスクを考慮すると、今回の研究結果は、改めてこのワクチンの安全性を示すものになったと考えられる。研究チームは、これらのデータが全人口に関する情報を反映したものではなく、因果関係を特定するものでもないことを認める一方、安全性に潜在的な問題があれば、それを警告することに役立つものだと述べている。
研究結果をまとめた論文の著者の一人は、これらのデータベースは「CDCがワクチンの安全性を評価し、予期しなかった、または異例の事象を特定するために、使用することができる重要なツールだ」と説明している。
また、この研究の結果に関連して、米ヴァンダービルト大学のエリザベス・フィリップス教授は、mRNAワクチンとの関連性がすでに知られている心筋炎やアナフィラキシー(重篤なアレルギー反応)の他には、予期していなかった有害事象は報告されていなかったとコメントしている。