売却(分離)騒動渦中のプリンスホテルを舞台に、大々的に新規ビジョンをお披露目。この場所(港区高輪)は今年の4月、リニューアルした西武園ゆうえんちのグランドオープンとその詳細が発表された場所だ。
長期化したコロナ禍にあって、果敢に挑んだ遊園地の改革は「集客に一定の成果を上げている」(西武HD広報)という。期待と不安が交差するこの場所で発表された新規事業。果たして「アウトドア」への挑戦は、今後どのような道を辿るのだろうか。
異業種のコラボレーションは、不透明な時代背景の中、コスト削減や相乗効果への期待から昨今各所で見られる現象だ。今回発表された新規事業は、西武グループが持つ多くの優良有休地や観光地、公園施設などのアセットを、キャンプ事業を手がけるR.projectのノウハウとを掛け合わせることで、アフターコロナの時代に合った新しいレジャーの選択肢を生み出すものだ。西武グループのひとつ西武造園が51%、R.projectが49%の出資で事業会社「ステップアウト」(池袋本社ビルに入る)を立ち上げ、両グループのコラボレーションが始まる。
なぜアウトドアなのか
会見で西武HDの後藤高志は「キャンプが生活に根付いている米国を参考にすると、日本は大きな伸びしろが期待できる」との展望を示した。
会場は自然を感じさせる草木があしらわれ、R.projectが用意したキャンプセットも展示。
本発表時に示された同社のファクトシートによれば、アウトドア関連の市場規模は、米国は日本の86倍という大きさだ。また、日本の年間キャンプ参加人口は本場と言われる米国に比べ2019年時点で10分の1以下の割合でしかない(*1)。その推移は、同じく2019年時点で860万人と7年連続で前年を上回っており、コロナ禍が直撃した2020年は国内旅行が今までにない打撃を受けた中で30%減と落ち込んだが、それでも610万人の利用があった。可能性を持つ未開のジャンルと言える理由だ。
*1 米国人口3.3億人に対し年間キャンプ参加人口はその3割の1.1億人。日本は人口1.3億人に対しキャンプ参加人口は860万人で1割未満。西武HDファクトシートによる。
コロナ禍は人々の意識や行動を大きく変えた。キャンプ人気はその現れでもある。三密を避けるレジャーであり、自然環境の整った郊外への人気は高まっている。コロナ禍はきっかけとなり、この需要は今後もさらに拡大すると西武HDとR.projectは考えている。