これまでに3社のみなし業者(ビットステーション、ビットエクスプレス、来夢)が金融庁への登録申請を取り下げており、今回で計5社が仮想通貨交換業から撤退したこととなる。海外からは、仮想通貨ヘッジファンドが、ビットコイン価格下落に伴いマーケットから撤退を余儀なくされているとも報じられた。
フィスコ仮想通貨取引所(FCCE)では、4月2日に安値686,500円を付けるなど、2月22日の安値628,000円や60万円割れを意識させられる展開となった。テクニカルでも、200日移動平均線との乖離率が-39%にまで拡大しており、投資家心理の悪化が顕著な状態となった。
ただ、3日にネット証券大手のマネックスグループが、不正流失事件で揺れる大手仮想通貨取引所コインチェックを買収すると報じられた(正式発表は6日の予定)。買収提案報道を機にマーケットは一変。値ごろ感も影響し、ショート筋の買戻しが発生し一時80万円台を回復した。
今回のニュースが、今後の仮想通貨マーケットにどこまでポジティブな影響を与えるかが注目となろう。マーケットではコインチェック問題の動向が関心を集めていたが、このタイミングでのニュースはサプライズと捉えられる。
すでに交換業登録が済んでいるSBIグループや、仮想通貨事業への参入検討が報じられたヤフーといった大手に続き、マネックスグループも仮想通貨業界に加わることになれば、「高いセキュリティとガバナンスを有する企業による参入」といったポジティブな業界再編と見ることもできる。
昨年4月に改正資金決済法が施行されてちょうど1年経過したが、仮想通貨事業を手掛ける者として、仮想通貨業界の再編がこんなに早く始まるとは想定していなかった。1月のコインチェックのNEM流出事件によって、仮想通貨交換業登録というハードルが一気に高まったことが背景にある。今後、仮想通貨業界への参入を発表しているが、交換業登録が済んでいない企業が、交換業登録を済ませている事業者に触手を伸ばすことは容易に考えられる。
もっとも大手企業による参入は、業界の信頼回復につながるほか、セキュリティの高さなどが利用者保護にもつながるだろう。みなし業者の廃業も進むだろうが、利用者保護やAML(アンチ・マネー・ロンダリング)の観点を考慮すると、仮想通貨業界の再編は不可避だ。
また、今月をメドに発足される新たな仮想通貨の業界団体は、金融庁から自主規制団体としての認定(資金決済法第87条で定める認定資金決済事業者協会)を目指す方針を打ち出している。新しい団体には交換業登録16社が参加し、交換所の内部管理体制や、交換所のシステム障害対策、詐欺的なコインやICOなど利用者を保護するための9つの施策を掲げている。今後、自主規制団体としての認定を受ければ、仮想通貨業界の信用回復につながるだろう。
業界再編と正式な自主規制団体設立は、ビットコイン価格の下支えになると想定している。仮想通貨交換業者だけではなく、一人の投資家としても、これらの動きは注目したい。
連載:「仮想通貨」マーケット実況
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