例えば、サムスン電子の順位は前年から44位上昇し、26位となった。2017年に頻発したギャラクシー・ノート7の発火事故や、李在鎔(イ・ジェヨン)副会長の贈賄スキャンダルにより、サムスンの評判は回復不能なほどに傷ついたと思われていた。
しかし同社は、議論を避けるのではなく、真正面から危機と向き合い、公の場で繰り返し謝罪。自社のナラティブを書き換え、今年の平昌冬季五輪では「できないことをしよう(Do What You Can’t)」というメッセージを世界に発信した。かつて苦境に追い込まれた同社は、義足(とサムスン製「Gear VR」のちょっとした助け)で歩く練習をする女性が登場する感動的なCMで、失った以上の信頼を勝ち取ったのだ。
「サムスンは、調査対象企業の中で最も早く順位を上げた」とハーングリフィスは言う。「サムスンがうまくやっていることを、アップルはまるでうまくできていない」
倫理的な行動、公正さ、製品価値、透明性は、企業の評判を決定づける上で非常に重要だ。そのため、アップルが今年のランキングで順位を38位落とし58位となったのも当然のことだ。iPhoneのロック解除をめぐる米連邦捜査局(FBI)との対立、租税逃れ、iPhone Xの売り上げ不調、長くうわさされていたiPhone速度低下問題が原因と言えるだろう。
アップルは、収益面では勝利を果たしたが、これにより自社の評判は回復できないだろう。「高い利益を上げているとみなされることは、企業の社会的責任(CSR)の面で否定的に受け取られがちだ」とハーングリフィスは言う。「アップルは世論という裁きの場で重い罰を受けている」
アップルのような企業が挑戦しなければならないのは、目的意識の高い企業だと世界にアピールすることだ。サムスンは、自社製品と人間的な体験をつなげることで、このハードルをクリアした。
しかし、方法はそれだけではない。上層部の信念が、会社の評判を大きく向上させることもある。その良い例が、マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)だ。移民問題などの社会問題に対するナデラの確固たる姿勢は、マイクロソフトがランキング10位に入った理由の一つだ。
インド生まれのナデラは、子供の頃に不法入国した移民(通称「ドリーマー」)の強制送還を猶予する制度(DACA)の支持者であり、トランプ政権が同制度の撤廃方針を表明した後には、リンクトインへの投稿で次のように綴った。「私はCEOとして、世界中から集まった才能ある社員が私たちの会社、顧客、そしてより広い経済にもたらしてくれる直接的な貢献を日々目の当たりにしている。私たちはマイクロソフトで働くドリーマーたちを深く気にかけ、完全に支援する」