Exclusive Interview

2017.11.06

藤本あゆみ氏 「個人に合った働き方」を選択できる制度・環境とは?
第1回 「本当にやりたかったこと」を探す旅

at Will Work 代表理事
藤本あゆみ(ふじもと あゆみ)氏
東京経済大学卒業。2002年、株式会社キャリアデザインセンターに入社し、求人広告媒体の営業に従事。入社3年目に、当時最年少でマネジャーに昇進。07年グーグルに転職。Women Willプロジェクトのパートナー担当などを経て、15年に退職。16年一般財団法人at Will Workを設立。並行して、株式会社お金のデザインでマーケティング・広報を担当。

多様な働き方の事例を共有するプラットフォームとなり、「働き方を選択できる社会」の実現を目指す一般社団法人at Will Work。その代表理事を務める藤本あゆみ氏に、at Will Work設立に至るまでの経緯、これからの新しい働き方、そのために必要なオフィス環境などについて語っていただきました。


ドキュメンタリーの制作に憧れた学生時代

10代の頃は、ドキュメンタリーの映像制作に携わりたいと思っていました。長い時間をかけて対象となる人物の生き様に向き合い、それを短い時間に凝縮して表現するところに魅力を感じていたんです。そのため、高校を卒業したら大学に行かず、専門学校などに行って技術を身につけ、制作の道に進もうと考えていました。ところが、両親や高校の先生に「お願いだから大学だけは行ってくれ」と反対されました。そこで、映像制作技術を学べる東京経済大学コミュニケーション学部に進学しました。

大学に入学すると、早速、映像制作会社でアルバイトを始めました。しかし、学生がバイトですぐにドキュメンタリーの制作に関われるはずもなく、バラエティ部門に配属されて、その時は「人生ってすごく理不尽だな」と思いましたね。バイトをしながら、そこで働いている人たちを目の当たりにしたことが、自分が仕事と向き合う最初のきっかけになりました。会社には、やりたいことをやれている人も、やれていない人もいましたが、皆さん、自分の仕事に誇りを持って働いていました。ただ、やはり制作の仕事は忙しく、いつも会社に行くと、梱包材にくるまって寝ていたり、近所の銭湯に行く時間すら惜しくてシンクで体を洗っていたり……。すごいなと思いつつも、私の20代は果たしてこれでいいのだろうか。しかも、ドキュメンタリーに携われる保証もない中で、やっていけるだろうかと躊躇しました。

やがて就職活動の時期になり、私も就活してみようと思いました。やってみて、やっぱり違うと思えばそのままでいいし、もし新しい道が開けたら、その道に進めばいいと思ったんです。この時初めて、自分のキャリアの選択肢が広がる瞬間を感じました。中でも面白そうだと思ったのが、人材紹介の仕事です。人は人生の多くの時間を仕事に割いているのに、やりたくない仕事をしている人もたくさんいます。そんな中で、その人に適した仕事とは何か、という問に向き合うことは、ドキュメンタリーに似ていて、すごく面白いと感じたのです。もし制作の道に進んだら、そこから多分ずっと逃げられないでしょうから、人生の広がりも考慮し、人材紹介の道に進むことにしました。


人材サービス会社を経てグーグルへ

内定を受けたのは、人材紹介と求人媒体を運営している会社でした。社長とは面談で、人材紹介の話で盛り上がったので、配属先は人材紹介しかないと思っていました。ところが、入社3日前くらいに社長から「君は適性があるから営業だね」と言われて、求人誌の広告営業に配属されました。辞めようかどうしようか3日間悩みましたが、せっかく頂いた内定を辞退するのは義理に欠けると思い、入社することにしました。

入社後は、「やるからにはちゃんとやりたい」という思いもあり、仕事を一生懸命やっていると、次第に仕事の面白さを感じるようになりました。求人誌の真っ白な2ページの見開きに、会社のストーリーや、働く人の生き様、哲学みたいなものを、いかに表現するかを考えるのが、とても楽しかったですね。

入社5年目の時に社内結婚することになり、「これからも頑張ります」と社長に報告に行くと、社長から「どちらかが辞めるか、部署を異動するか決めて」と言われました。そのタイミングで、人材紹介の部署に異動できる可能性もあったのですが、「今さら社内で異動するのもつまらない。せっかくだから違う会社で働いてみよう」と思い、退職することにしました。求人情報をチェックしていて、目に止まったのがグーグルの営業職募集の求人でした。仕事の内容はよくわからないけど、それだけに面白そうだし、2年くらい働いてみて、その先に何か見えたら辞めればいいかなと思って働き始めました。

私がグーグルに入社したのは2007年です。その頃のグーグルは、YouTubeの買収のニュースが出た頃で、まだ検索連動型広告が中心でした。今でこそデジタルマーケティングは当たり前になっていますが、その頃はまだ、その価値が十分認識されていませんでした。新しい価値を世の中に広めていく機会に立ち会えて、すごく楽しかったですね。私は新しいことにチャレンジするのがすごく好きなので、誰もやったことがないという言葉にとても弱いんです。グーグルでは、そういう仕事がどんどん目の前に降ってきて、自分でつくることもできました。仕事に没頭していたら、あっという間に年月が過ぎていきました。


「私が本当にやりたかったこと」に気づく

その間は、もともと自分がやりたかったドキュメンタリーや人材紹介のことはすっかり忘れていました。入社8年目になった頃、いろいろなことが一通りできるようになり、「私がやりたかったことって何だったっけ?」と、はたと思い出しました。仕事はチャレンジングで楽しいけど、何かもっと違うことをしたいと思うようになったんです。そこで、違う部署の仕事を手伝おうと思い、シンガポールに行ってベトナムチームの立ち上げを手伝いましたが、やることは同じことの繰り返しでした。次は、全く違うことをしようと、マーケティングチームがやっていたWoman Willプロジェクトを手伝うことにしました。

当時のWomen Willプロジェクトは、日本では、第一子出産後、6割の女性が離職している現実を踏まえ、ワーキングマザーの復職をテクノロジーの力で解決することを目的として始まったプロジェクトでした。その活動がとても楽しくて、それをやっているうちに思い出したんです。「仕事は人生の中で大事だとあれだけ思っていたのに、自分自身もそれに向き合えていないし、女性の選択肢が狭くて、辞めなければいけないのは、何かもったいない」と。

そして、活動を続けているうちに、お母さんたちの働く環境をよくするには、周りの全ての人たちにとって、いい環境にならければいけないと気づきました。お母さんたちだけのための施策だと、お母さんたちが何となく特別視されて、居心地が悪くなって辞めていってしまうケースをたくさん見てきました。そこで、思い切って2015年末にグーグルを退職し、翌年、プロジェクトで一緒に活動していたメンバーと、「働き方を選択できる社会づくり」のために、新たに立ち上げたのがat Will Workです。