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世高市政権の誕生後も「女性活躍」の言葉が空回りし、ジェンダーギャップ指数世界117位に沈む日本。なぜ女性たちは実力があっても組織のトップに立つのは難しいのか?
世界の女性リーダーを取材してきたForbes JAPAN Web編集長の谷本有香と、「WOMEN AWARD」編集デスクの薦田美奈子、ジェンダー平等の先進国、オランダの大学でジェンダー学を修めたアカウントディレクターのソーン・マヤが、本音トークを展開。
女性リーダーが背負う影の役割や見えないコストの正体、そして男性社会の壁を突き破るヒントについて語り、上辺だけのD&I論を一蹴する。
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谷本有香 (Forbes JAPAN Web編集長) |
どういう女性が、今ボードメンバーとして求められていると思いますか?
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薦田美奈子 (Forbes JAPAN「WOMEN AWARD」デスク) |
男性中心の文化が根強いけれど、今は過渡期でもある。だから一度は女性としてのキャリアを捨ててがむしゃらに働いて男性社会に寄り添いつつ、徐々に味方を増やしていく、みたいな。
気が遠くなるような話だけど、そうやって周りから変えていける女性は、やっぱり上手だなと思います。
谷本
そう、これは日本の文化的側面もあるのか、ハレーションを起こさない能力が求められる気がします。さらに女性・男性に限らず、現状、指名をする属性としての「男性」に選ばれるタイプであることもポイントに挙げたい。
世界の女性リーダーたちと話してきたけれど、国や地域によって取締役の典型的な女性像があるように感じます。多くはないサンプルのなかで、私の偏見かもしれないけど、従順そうなお嬢様タイプが多い地域や、パワフルでキュートなラテン系が多い国がある。
そして、歯に衣を着せず、相手が誰であれ意見をストレートに言えるようなタイプの女性の取締役が、本当に少ない印象。たまにそういう人が取締役に選ばれても、大体長くはその地位にいられない。純粋に、私たちは女性という記号でしか見られていないのかもしれないと思うことも。
私が好きな、世界的小売チェーンのアジア太平洋部門のトップになった女性がいて、彼女に10年くらい前にインタビューした時の言葉が忘れられない。「実績をあげていけば、女性でも取締役くらいまではいける。ただ、社長になるのは基本難しい。だから、私は何をやったと思う?みんなの『お母さん』になったのよ」と。
彼女は、男性の取締役陣に出世競争から排除されないよう、「具合が悪そうだけど大丈夫?」「あなたのお子さん、今日誕生日じゃない?おめでとう!」と、彼らの体調や家族のことまで常に気を配り、敵意はないという姿勢を示し続けてきた、と。そして、ようやくCEO争いの舞台に立てたそう。
薦田
まず「敵じゃありません」とアピールして、相手を安心させてからなんですね。
谷本
彼女は実力があったし、その後CEOになれた。でも、日本では優秀であったとしても、ハレーションを起こさず、従順な優等生タイプのほうが、取締役に登用されやすい現状があるのではないでしょうか。
薦田
それを「当社ではこんなに女性が活躍している」と誇らしげに企業は謳うんですね。
谷本
色々な女性役員に取材して分かったことだけど、優等生を演じるのは、女性リーダーに与えられた影の役割かも知れない。男性にも女性にも嫌われないように優しい「いい子」を演じながら、男性以上に実績もあげていく。これは大変。
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ソーン・マヤ (ブランドスタジオ アカウントディレクター) |
そういうコストが計算されてないんですよね。男性より笑顔を多めにしているコストとか、男性経営陣に常にとても細やかな配慮をしているコストとか。それが全部、女性の性格とか「らしさ」に吸収されちゃって、加点にならない。
薦田
リーダー層には男性が多いから派閥で勝つ方法があるけれど、女性はまだ少数だからそれができない。今の段階では、全方位的に嫌われないような姿勢を取らざるを得ないらしいんですよね。
谷本
心理学者の河合隼雄先生が言うように、日本は本来「母性社会」で、みんなを分け隔てなく受け入れ、協調することがベースにあります。ただ、男性はそこに父性的な競争を持ち込み、上を目指す縦のラインを意識することが許されている。
我々女性が同じようにそれを意識すると、ガツガツしているとマイナスの印象を持たれてしまいかねない。だからいつも女性は横のつながり、つまり母性をベースに振る舞わなきゃいけない。相反するふたつの文化の板挟みになって、がんじがらめになっている。
薦田
実際、活躍している女性リーダーに取材すると、皆さん口を揃えて謙虚に「全然、野心なんてなかった」「出世しようなんて思っていなかった」とおっしゃるんですよ。だけど、男性からはあまり聞かないですね。
「出過ぎた杭」になれ
谷本
最近、女性の駐日大使の皆様と話す機会があったのですが、彼女たちが言うには、いかに能動的に動くかが大事だということ。企業でいえば、メンタリング制度を全社員に設定したり、女性のカウンシルを立ち上げ、女性を起用するための施策を打ち出す。また、透明な仕組みづくりといった制度に落とし込むことの重要性を説いていらっしゃいました。
そして、メキシコの大使が言った言葉が忘れられません。「日本人の女性たちよ、not be KAWAII, be strong」と。
私たち女性が、組織の階段を上っていくためにできることは何でしょうね?
薦田
数字や技術力で自分の成果を示すことは、大事だと思います。バイオ系の研究職やエンジニア、士業などは、女性リーダーが比較的活躍しやすい職種ですよね。
例えば、Forbes JAPAN「 WOMEN AWARD 2024」の個人部門で「イニシアティブ賞」に輝いた、山陰合同銀行初の女性代表取締役、吉岡佐和子さん。男女雇用機会均等法が施行されて間もない頃、短大を出て入行し、営業成績を積み上げて、それを足がかりに今のポジションを手に入れた方です。
谷本
やっぱり数字は分かりやすいんだ。
薦田
吉岡さんを抜擢した上司で、同行頭取の存在も大きかったといいます。
谷本
確かに、支援者の存在は本当に重要。誰が何と言おうと、「この人だ」と信じてサポートし続けるトップがいる企業は強い。メルカリなら山田進太郎さん(※)のように、トップ自らがデータを使ってダイバーシティを後押ししてきた存在がそう。
※…メルカリは2021年、山田進太郎氏のもとでCEO直轄の社内委員会「D&I Council」を設置。25年7月時点で女性取締役比率は58.3%に上る。
薦田
あとは「嫌われる勇気」かな。
谷本
そうですね。でも嫌われるわよ、今は本当(笑)。なんか、チャーミングに嫌われないギリギリのラインで、笑いながら「部長おかしいですよ」とか言えるようになるといいのかもしれませんね。嫌われる勇気と、嫌われないスキルを併せもつ。
マヤ
今日お話しして、私はもっとプロレスをしようと思いました。楽しく、さっぱり喧嘩して、落としどころはここだと分かっているような戦い方。
谷本
プロレスってある意味、筋書きのあるケンカですからね。根にもつ男性もいるかも知れないけど、その覚悟を決めることはすごく大切。
私はそうだな、やっぱり「出過ぎた杭になれ」ですね。優秀な人材の定義は、ずいぶん多様になったと思う。特定の分野で圧倒的に突き抜けていく。その「トンガリ」が、時代に合えばいい。
巡り合わせはあるかも知れないけど、その時に備えて自分の強みをしっかり磨いておくこと。ジェネラリストではなくスペシャリスト。肩書きではなく、自分らしさを磨いていくかしら。
薦田
「らしさ」でいいんですよね。それが強みになる。
谷本
そう。タグを付けられる感じ。「〇〇といえば、あの人」と思い出してもらえる何かがあれば、それが会社の方針と重なったときに、上に行ける。そうなれば、これまでと違う文脈でダイバーシティのある人が上に立ち、ロールモデルになる。
薦田
出る杭がひとつだけじゃなく、いくつも出てくるといいですよね。
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