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仕事をサボったり、やる気がないのにプライドだけは高かったり、あるいは仕事がうまくいかないのは、環境と人のせいにしたり。そんな会社の「困ったちゃん」、いませんか?
社長自らが「こんな会社で働くのが嫌になりました」と、転職を考えて、履歴書を途中まで書いてしまった会社があります。
北九州市にある訪問看護の会社「プーラビダ」は、離職率83.3%でした。訪問看護に行くはずの看護師が車の中でYouTubeを見て時間を潰したり、職員の愚痴が蔓延したりと、雰囲気がよろしくない会社だったのですが――。
そんな会社が3年で離職率は1.5%に激減。それどころか、営業利益は業界平均の2倍を超える10.4%を達成。
しかも全国的な脚光を浴びます。職場環境づくりにおいて厚生労働大臣表彰を受賞。経済産業省からは「DXセレクション2026」でグランプリ獲得、さらに北九州D X大賞グランプリ、Forbes JAPANが新たな価値を生み出す中小企業を表彰する「Small Giants Award」において、愛される会社「Loved Company賞」を満場一致で受賞。この1年で4冠を達成したのです。
なぜ訪問看護の会社は劇的に変化したのでしょうか。
実は変わった取り組みをやったわけではありません。どの会社でもできることを週に一回やりました。題して、「売上げを生まない1時間」です。
この1時間で「やる気スイッチ」が全員全開したのです。今回はその1時間のことを紹介したいと思います。
看護師だった浦濱広太朗さんは2013年に在宅医療の訪問看護ステーション「プーラビダ」を創業。会社が軌道に乗り始め、浦濱さんがインドネシアの新規事業にかかりきりになった頃から暗転します。会社を留守にしている時間が長くなると、ケアマネージャーたちからの信頼を失っていき、訪問看護の依頼は激減(ちなみに、インドネシアの事業も実質的に失敗)。職場は不満の巣窟となりました。
職場を変えなければと必死に若き社長の浦濱さんは動きます。
まず、「危機感を共有すること」でした。MBAで学んだコッターの変革理論を参考に、赤字という厳しい数字を全社員に開示したのです。そうすると、組織の不満分子たちが退職していきました。
次に取り組んだのがDXです。鹿児島の経営者の講演で「人時生産性」という考え方に出会います。粗利を、働く人の総労働時間で割った数字です。これを上げるには、コストを削るだけでなく、働く人のやりがいとサービスの質を上げることが近道になります。 「コストを下げてこそ改革が可能になると思っていましたが、目から鱗が落ちました」。
そして北九州市の無料DX支援を受け、Google Workspaceを基盤に自前のバックオフィスシステムをつくり、AIも組み込みました。1時間半かかっていた書類作成は3分に短縮され、月末でも全員が定時で帰れるようになりました。 こうしてDXで事務作業が圧縮されると、業務時間内に「売上を生まない1時間」を設定しました。
もともとは創業時から設けていた時間ですが、申し送りの時間に形骸化していました。これを業務時間内の勉強会に変えたのです。
例えば、「強迫性障害」という病気があります。手を洗うのに4時間、歯磨きに2時間、入浴に8時間かけるような病気です。プーラビダのスタッフには、精神科の経験がある人が誰もいませんでした。患者さんの対応に四苦八苦します。
そこで東京の著名な精神科専門看護師をオンラインで招き、「暴露療法」というやり方を学びます。汚いと感じるものを10段階に分け、まず最も軽い「レベル1(たとえばスマホ)」を5秒だけ触ってみる。こうして「ものに触ることは汚いことではない」という意識に少しずつ慣らしていく。 その結果、その患者さんは、1人で30分で入浴できるようになりました。8時間が30分です。
学習した成果が劇的に出たのですから、看護師たちは感激します。このようにして、褥瘡ケアの専門家、おむつの当て方の専門家、そして精神科看護の専門家を、外部から呼んでは学習していきました。
この話を聞きながら、私はこう言いました。「少年野球の子どもたちに、イチローなど日本トップの人が教えに来てくれたら、それだけでモチベーションは上がりますよね。それと同じですね」。
つまり、「やる気スイッチ」とは、昨日の自分よりも明日の自分はうまくなりたいという思いに「環境」を与えられると火がつくのです。私は訪問看護だけでなく、製造業やサービス業でも似たような事例を何度も見てきました。
誰しもその仕事に就いた初心があるはず。やる気スイッチで劇的に変わるのです。今、浦濱さんには全国から講演の依頼が相次いでいる。
藤吉雅春
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