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藤吉雅春 Forbes JAPAN 編集長(聞き手)
世界各国のForbesの記事で、今回、井関君が選んだ企業から何が見えた?
井関庸介 Forbes JAPAN editor at large
今回、特に面白かったのが「DDN(DataDirect Networks)」という米データストレージ企業と、インフラ投資会社の「ファイブ・ポイント(Five Point)」の事例です。
藤吉
DDNの共同創業者兼CEOは、あの貴族みたいな格好をしているフランス人起業家だね。
井関
はい(笑)。DDNは1998年にアレックス・ブザリとポール・ブロッホというフランス人起業家たちが米国で創業し、スーパーコンピューター向けのデータストレージを開発してきた企業です。NVIDIAと組んだことで一気にAI時代の主役に躍り出ました。基幹のストレージ技術というコア技術を磨き続ける一方で、2023年からはソフトウェア主導の販売へビジネスモデルを転換し、粗利益率90%超という高収益な構造へ脱皮しています。
藤吉
時代のタイミングが、向こうから彼らの技術に勝手に追いついてきたわけね。
井関
時代が追いついた面もありますし、自ら売り方を転換したことも大きかったと思います。技術という「軸」を磨きつつ、市場のニーズに合わせてビジネスモデルを変えたことが、時代の文脈と噛み合ったのではないでしょうか。
もう一つのファイブ・ポイントも、シェールガス採掘(フラッキング)の廃水を「資源」として再定義し、AIデータセンターの冷却水として供給する巨大なエコシステムを組み上げました。
我々はAIに関しては、アプリケーションや人事といった大きなニュースに目を奪われがちです。しかし実は「AIそのもの」だけではなく、「昔からあったコア技術や未利用資源を、新しいビジネスモデルで現代の課題に接続させた企業」にもっと目を向ける必要があるのかもしれません。
藤吉
ゴールドラッシュで大成功したのが、金の採掘よりもリーバイスのジーンズと物流のアメリカンエキスプレスだったみたいな話だね。
井関
そうなんです。技術やインフラという周辺にチャンスがあるのが一つ。そしてもう一つ重要なのが、「変わらないこと」自体の価値かと。確かに、最先端のAI開発を競う新興企業は、激しい人材引き抜きや組織の変遷が避けられません。とはいえ、同じトップランナーでもアンソロピックのように経営陣が安定した体制を保ち、社内でドタバタ劇を起こさない「組織の堅牢性」が、顧客企業にとっての強力な信頼に結びつく局面もあります。
「揺るがない軸」と「柔軟な構造転換」をあわせもつ組織にこそ、中長期的に生き残るチャンスがあると感じます。
藤吉
その話を聞いていて、まさに日本の製造業の強みそのものだなと思った。
例えば、100年企業のロート製薬。再生医療の研究をずっと続けていたら、最近になって市場が「ロンジェビティ(健康長寿)」と言い始めている。
「ブレイクスルー企業100」に登場したオキサイドという企業もそう。世界シェアを誇る単結晶の製造技術を持っているけれど、「半導体や量子コンピュータの時代になって、市場が跳ね上がった」とおっしゃっていた。
井関
先日取材した滋賀県の大木工藝は、1970年の創業から約55年間、「炭化技術」を研究してきた技術志向の会社です。同社は今、独自技術を「AIデータセンターやサーバールームの冷却効率と節電効率を高める炭素シート」という現代の用途へ再定義しています。AIデータセンターの需要が高まるいま、こうした技術は世界的に注目が高まっても不思議ではありません。長年磨いてきた本質の技術を、AIという新しい時代の文脈へと「自ら接続し直した」わけです。
藤吉
三菱重工のガスタービンもそうだよね。愚直に技術を磨き続けてきたからこそ、今の爆発的な電力需要の中で世界的な技術と言われている。
自分たちが持っている足元の技術が、現代のキーワード(AI、ロンジェビティ、脱炭素など)で「言語化」して時代の潮流と接続できていて、日本の多くの企業に眠っている宝はそこにあるんじゃないかな。
井関
「いまAIが熱い!」というトレンド志向から一歩引き、「その会社がもつ揺るぎないコア技術や歴史とは」「それを現代の文脈(AIやインフラ等)に合わせてどうビジネス構造をアップデートしているか」という観点から見極めることが、成長企業を見抜くカギなのではないでしょうか。歴史がある企業には、変化を乗り越えて継続できただけの理由とポテンシャルが必ずありますから。
最新号の「World of Forbes」では、世界と日本の最前線で起きているこの「構造の変化」を詳しく解説しています。ぜひご一読ください。
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