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「これは子どもの教育に役立つかも」と、取材中に頭の中でパチっと指を鳴らすことがあります。
AI時代に人間の役割が問われるゆえか、あるいは我が家のできの悪い子の将来を案じてか、参考にしたくなるのは、事業を大化けさせた人たちの10代の頃の教育環境です。
先日、「ブレイクスルー企業100」という企画で取材した、朝日インテックの宮田昌彦会長のお話がまさにそうでした。迷路のような血管の中を通る極細のワイヤーで、世界の手術を変えた偉大な会社です。しかし、もとは産業用のワイヤーをつくる小さな部品会社の一つにすぎませんでした。
下請けの小さな町工場が、世界的な医療機器メーカーに成長したきっかけは、宮田会長が「5人の侍」と呼ぶトップドクターたちとの出会いに始まります。医師と共同で開発を行い、欧米の医療界の権威たちからも大絶賛されます。しかし、医療業界を知る人なら、「ちょっと待てよ」と思うはずです。
医者と共同開発して大成功を収められるのであれば、世界中の企業は同じことをやるはずです。
これがそう簡単でない理由は、医者の姿勢が厳しいからです。患者の命を預かる医者は、当然ですが手術は真剣。手術道具をつくる人間にも要求は厳しくなります。道具も人の命を左右するからです。また、医師は一匹狼タイプが多く、対等に付き合うのは大変です。では、なぜ宮田会長は世界中の医師たちを巻き込めたのでしょうか。
「学会であの先生とこの先生を引き合わせたら、すごい化学反応が起きるだろうなと考えるわけです」と、それを可能にしたのはプロデュース力だと会長は説明します。でも、私が「医者と対等に付き合うことは困難だと、業界内で聞きました」と聞くと、こう言われました。
「僕は中学時代からずっとハンドボール部でキャプテンをやっていて、人と話したり、人をまとめたりするのが好きなんですよ」
え、そこ? つまり、部活での経験が役に立ったというのです。実はこの取材の数ヶ月前、名門大学の学長に「AIが正解を教えてくれる時代に、子どもには何を教えたらいいのか」と質問したら、理系の教授らしい答えを期待していたものの、たった一言、こう言われました。
「部活です」
非認知能力と呼ばれるコミュニケーション力や最後までやり抜く力、そして理不尽な状況を切り抜けられる力は、先輩後輩の中で揉まれる部活が最適だというわけです。AIにできない「人間力」は部活から生まれる、という説明でした。しかし、世の中に部活を経験した人はごまんといます。私もずっと運動部にいましたが、怒られてばかりで劣等感だけが根づいてしまい、社会で役に立っているとは到底思えません。そこでもう少し「部活」を紐解いてみます。
私はある投資家に「◯◯社長は、難しそうな市場に進出しても、苦しみながらも最後はいつも成功しますよね」と質問したことがあります。すると、こう言われました。
「◯◯社長は大学アメフト部のキャプテンだったでしょ。だから、どうやったら試合に勝てるかという、勝ち方を常に考える習慣がある。事業もゴールを設定して、逆算して勝ち方を考えているんですよ」
なるほど。「試合に勝つ」(=事業目標を達成する)という明確すぎるゴールがあり、そこから逆算する。技を磨くだけでなく、チームメンバーを上達させて、適材適所に配置し、試合までのスケジュールを計算しながらチームを底上げして勝利に導く。こんなことを子どもの頃から毎日やっていたら、社会に出て荒波を生き抜く力は、そりゃあ養われますよね。
そして案の定、何人かに聞くと、この仮説は当てはまりました。ある人がこんな話をしてくれました。 「自分は同好会的なテニスサークルに入ったのですが、関東リーグの体育会のテニス部にも勝っていました。なぜなら、キャプテンだった先輩が、勝つために独自のトレーニングメニューまで自分で開発して、全員をトレーニングさせていたんです」
そのキャプテンは、その20年後、Forbes JAPANの表紙を飾る起業家ランキング1位の経営者になりました。
一方、我が身を振り返ると、昭和の時代はどこの学校もそうでしたが、部活に鉄拳制裁はつきもので、「主体的」というより「管理型」でした。試合に勝つことよりも、怒られないようにするにはどうしたらやり過ごせるかと考えてばかり。
では、「主体的」になるにはどうしたらいいのでしょうか。
朝日インテックの突破力に話を戻しましょう。名医たちの信頼を得られた理由は、医者たちのフィーリングを言葉にしてあげて、「これですよね」と、技術という形あるものに変換できる点です。医者がイメージしたものを形にできれば、医者たちは喜ぶでしょう。非言語を五感で察知することこそ、実は部活が修練の場として最適ではないでしょうか。教えてもらうのではなく、言葉になっていないものを「観察」して掴みにいくからです。
医者の頭の中のイメージも、部活の先輩の技も、根っこは同じです。観察して感覚を「盗む」。ライバルや対戦相手の癖を読む、あるいは、上達するために先輩の技を盗む。また、監督やコーチの教えを、自分のプレーに変換させる。
主体的な自律思考とは盗むことから始まるのかもしれません。そんなわけで、このメールマガジンでは、毎回、私がすごいと思う人たちから盗んできたことをお届けしたいと思います。
(次回に続く)
藤吉雅春
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朝日インテックのインタビュー記事「厳選 ブレイクスルー企業100」はこちら。
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