チャンスを掴むために必要なことを気づかせてくれる物語[CEO’S BOOKSHELF]

菅野隆二 ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ社長

なぜ、世の中には「運のいい人」と「運の悪い人」がいるのでしょうか。
近年では、その謎を解くための科学的研究が進められ、「物事の捉え方の違い」が要因のひとつと考えられているそうです。

私も、幸運は決して偶然ではなく、自分の考え方次第で、なおかつ、自分で作ることができるものだと思っています。

その考えを確信させてくれたのが、10年以上前に読んだ本書『Good Luck』でした。

物語は、54 年ぶりの再会から始まります。セントラルパークのベンチで、偶然に隣り合わせたジムとマックスは、幼なじみでありながら正反対の人生を歩んできました。事業を成功させたマックスと、失敗したジム。ふたりの明暗を分けた理由は、マックスが祖父から聞いた「魅惑の森」という逸話の中にありました。

幸運の魔法のクローバーを探せと命じられたふたりの騎士は、クローバーが生えるという魅惑の森を目指します。クローバーを探す過程で、人に頼るだけで最後には自信すら失ってしまったノットと、自ら土を運び、水をまき、人を助け、甘言に耳を貸さず、信念を貫き通したシド。

どちらが幸運のクローバーを手にできたのかは、もうおわかりですよね。

もしかしたら幸運をつかむチャンスは、人間全員に平等に与えられているのかもしれません。しかしながら、チャンスをつかむ準備を十分にしていたかどうかで、迎える人生の結果が変わるのです。

ご存じの通り、バイオベンチャー市場では、欧米企業の存在感が圧倒的に大きく、世界トップクラスのバイオ医薬の開発技術を持っているものの、日本企業は事業化で遅れをとってきました。ようやく今、医療分野への政府の後押しもあり、チャンスをつかむ時が近づいていると言えるでしょう。

当社も、米国市場での基盤を強化するなど、チャンスをつかむための準備を一歩一歩進めています。人生に遅すぎるということはないのです。ジムは、準備が整うまでに54年が必要だったのですから。

私には夢がふたつあります。ひとつは本社のある山形県鶴岡市と、バイオベンチャーの集積地ボストンを直行便で結ぶこと。これは当社が世界のバイオ市場でなくてはならない存在になっていることを意味します。
もうひとつは、私の影響でひとりでも多くの人がポジティブになってくれることです。

本書には、幸運を呼び込むカギは「人に手を差し伸べられる広い心」とも書かれています。人生やビジネスで成功している方々は必ずと言っていいほど、人のため、社員のためを優先して考えています。

目の前にあるチャンスにお客様と社員が気づけるようサポートすることが、患者様を助け、さらに鶴岡―ボストン間の直行便の夢の実現にも近づくことになるのでしょう。

title:Good Luck
author:アレックス・ロビラ フェルナンド・トリアス・デ・ベス
data:ポプラ社 952円+税/119ページ

◎アレックス・ロビラ
経済学者およびMBAホルダー。欧州の名門ビジネススクールであるESADEを卒業後、民間企業でマーケティングのキャリアを積む。1996年、コンサルティング会社を設立。クライアントには、ヒューレット・パッカード、マイクロソフト、ソニーなどが名を連ねる。心理学や民俗学にも造詣が深い。

内田まさみ = 構成

この記事は 「Forbes JAPAN No.15 2015年10月号(2015/08/25 発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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