オキュラスを超えるVRヘッドセット スタンフォードの研究者らが開発中

<a href="http://forbesjapan.com/wp/wp-content/uploads/2015/08/SCI.jpg"></a> ウェツシュタインらが製作したVRヘッドセットのプロトタイプ。<br />(Photo by Stanford Computational Imaging)

ウェツシュタインらが製作したVRヘッドセットのプロトタイプ。
(Photo by Stanford Computational Imaging)

ヴァーチャル・リアリティ(VR)はまだメインストリームとは呼べないが、多くの有望なデバイスが登場しつつある。また、解決すべき課題も多く存在する。

スタンフォード大学とNvidiaの研究者らはライトフィールド(光照射野)技術を用いた、VRデバイスのプロトタイプの作成を行っている。ライトフィールド技術はあらゆる方向からの光を一点に通過させ、人間の個々の目が距離を感知する動きを再現するテクノロジーだ。

一般的なVRヘッドセットは"ステレオスコピック(立体視)"技術を用いて三次元の錯視を作り出す。この技術は微妙に異なる角度からの2つのイメージを両目に投影している。しかし、その映像は平坦で、ユーザの両目に対し負担をかける。

「人間の目の仕組みはステレオスコピックよりもずっと複雑です。私たちの目は異なる距離に対して焦点を合わせることができます」とスタンフォード大学電子工学科の助教授、ゴードン・ウェツシュタインは述べている。
「例え1つの目でも奥行きを感知することが可能です。目の焦点を合わせることによりそれが可能なのです」

ウェツシュタインらのプロトタイプは、両目のそれぞれに深度を与えたイメージを作りだし、それらをステレオスコピックの技術と合わせて表示している。このプロトタイプは2つの透明なLCDスクリーンを使い、個々の視覚のレイヤーの最上層部にライトフィールド効果を生成している。それぞれの目に25のイメージの合成を見せることで深度の感覚を与えている。言わば、個々の目の前にホログラムを置いたようなものだ。

この技術はユーザが仮想世界を見て回るだけでなく、奥行きを検知することも可能にする。
このVRプロトタイプはNvidiaのMaxwellグラフィック・カードを搭載したデスクトップPCに接続される。ヘッドセット内に表示されるイメージはNvidiaのプログラミング言語、CUDAのアルゴリズムで生成されている。

秘密主義のスタートアップ、Magic Leapも拡張現実(AR)のヘッドセットを開発している。これらは仮想現実ではないが、ある種のライトフィールド技術を用いて現実味のあるデジタルオブジェクトを生成するという。しかし、同社はこれをどのように実現するかについての詳細を全く明らかにしていない。

深度の感覚を作ることのみがVR端末の課題ではない。ヘッドセットは極めて高精度な画像も必要とするし、頭の向きを変えた際に映像が表示される時間を可能な限り短縮する必要がある。ウェツシュタインのVRプロトタイプは市販のハードウェアで構成されているため、あまり高精度ではなく、遅延時間も短縮できてはいない。Facebookから数十億ドルの出資を受けたOculus Riftの最新のヘッドセットは、これらの精度や遅延時間の問題を解決済みだと報道されている。

ウェツシュタインは2010年からライトフィールド技術の研究を行っているが、今回のプロトタイプの開発を始めたのは彼がスタンフォードに加わった1年前からだ。ウェツシュタインは今週、ロサンゼルスで開催されるSIGGRAPH 2015で論文を公開し、デモを行う。今回のプレゼンで発表されるプロトタイプは3世代目のバージョンだ。
「eBayで買った市販のパーツと3Dプリンタで作成した筐体から生み出した、最高のプロトタイプをお見せしたい」とウェツシュタインは述べている。

編集=上田裕資

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