室温で製造可能な人工ダイヤ Q-carbonの潜在能力

Jeffrey Hamilton / gettyimages

ノースカロライナ州立大学(NCSU)の研究チームは、固体炭素で出来た全く新たな物質の製造に成功した。この物質は個体炭素としてはこれまであり得ないとされてきた性質を持ち、それを利用すると常温常圧でダイヤモンドを作り出すことが可能だ。

研究者らがQ-carbonと呼ぶその物質は、同じく固体炭素として知られるグラファイト(石墨)やダイヤモンドとは異なるという。
「自然界でこの物質が発見されるとすれば、どこかの惑星の核(コア)の部分でしょう」と、同研究チームのJay Narayanは言う。彼はこの発見に関する3つの論文の筆頭著者であり、論文の一つは11月30日、Journal of Applied Physicsに掲載された。

Q-carbonは強磁性体であり(これは個体炭素としてはあり得ないことだと考えられていた)、ダイヤモンドより硬く、わずかなエネルギーで発光する。
「Q-carbonの硬さとエネルギー効率の良さ、つまりすぐに電子を放出する性質は、電子ディスプレイ・テクノロジーの発展に寄与するものと期待されます」とNarayanは説明する。

またQ-carbonを利用して、ダイヤモンド結晶構造をつくることも可能だ。まず、ガラスやプラスチックポリマーといった基になる材料を元素状炭素(エレメンタル・カーボン)でコーティングし、それに一瞬レーザーを当て、厳密に制御された方法で急激に冷やすとQ-carbonができる。この冷却過程を調節することで、Q-carbon内にダイヤモンド結晶構造をつくることが可能だ。

「ダイヤモンドのナノニードルやマイクロニードル、ナノドット、あるいはもっと広範囲をカバーするダイヤモンドのフィルムを作ることができます。薬物の投与や産業プロセスに役立つほか、高温用スイッチの製造や電力工学にも利用可能です。こうしたダイヤモンド製品は単結晶構造のため、多結晶の素材を利用したものより硬質です。しかも、常温常圧で製造することができ、基本的に目のレーザー治療に使用されるようなレーザーを使用するので、応用品の開発が容易なだけでなく、製造工程にかかる費用は比較的安く済みます」とNarayanは話す。

NCSUは、Q-carbon及びQ-carbonを利用したダイヤモンドの製造技術に関して、暫定特許の申請を行った。

編集=上田裕資

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