これはプレビューです
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2024.02.26 20:00

関西圏の大学発スタートアップをグローバルの舞台へ

「関西圏の大学発スタートアップを世界へ」後編

「関西圏でグローバルを舞台に活躍する大学発スタートアップ」を創出するエコシステムの形成に取り組むKSACの活動内容に加えて、2022年度に起業活動支援プログラムに採択された、未来を変える可能性に満ちた研究・技術シーズを取材した。日本の未来を担う最前線の取り組みを前編後編の2回に分けて紹介する。


KSACに参画している大阪大学に籍を置きながら、日本全体を管轄する枠組みのプログラムオフィサー(委員長)でもある北岡康夫。彼に日本におけるアカデミア発スタートアップの現況を語ってもらった。

大阪大学共創機構 機構長補佐/工学研究科 教授である北岡康夫は、「スタートアップ・エコシステム共創プログラム」のプログラムオフィサーも務めている。

同プログラムは、国立研究開発法人科学技術振興機構による大学発新産業創出基金事業のひとつ。アカデミアから生まれるスタートアップの質と量を充実させるとともに継続的な創出を支え、「人材・知・資金が循環するエコシステム」を全国に形成することが目的だ。

北岡は松下電器産業時代に次世代光ディスク用短波長光源の研究開発に携わり、大阪大学に異動後は窒化物半導体材料の研究開発に従事してきた。その後、経済産業省に出向し、レアアース問題やナノテクノロジー・材料分野の技術戦略などの立案にかかわり、新しい国家プロジェクト「未来開拓研究制度」の設計にも貢献してきた実績をもつ。まさに技術を知り、産官学の全現場を知り、大学発スタートアップとエコシステムの必要性を知る貴重な人材である。

日本の産業と地域を活性化するために

まずはスタートアップの存在意義と大学の役割、地域に与える影響について聞いた。

「スタートアップは、マネーゲームの道具ではありません。日本の産業構造を劇的に変えていく存在であり、スタートアップと大企業の共創は日本に経済成長をもたらす枠組みのひとつです。大学に目を向けると、近年では研究資金の獲得においても社会課題を意識する必要性が出てきているため、若手の研究者を中心に社会実装や起業に対する意識が高まってきていると感じます。実際に研究者がスタートアップの設立に関与することが増えました。各大学が支援体制を構築し、技術シーズを発掘し、GAPファンドなどを用いてその価値を拡大させるノウハウを蓄積することが求められる時代になっています。さらには、支援体制やノウハウを確立し、それらを周辺の各大学や地域に広めていくことが望まれています。スタートアップの存在によって日本の産業全体を活性化させるためには、各地域の特色が濃厚に打ち出されていかなければなりません。関西は有望シーズを有する大学と公的研究機関が集積している魅力ある地域です。VCからの資金調達状況を見ると、創薬・バイオ系と環境・エネルギー系のスタートアップが多いとわかります。関西のスタートアップの技術ポテンシャルを世界に示すことこそ、地域の活性化に有効であると思います」

北岡は、インキュベーターの存在がエコシステム形成に必須のピースだと語る。

「これから先、さらに多くの研究者に社会実装へと向かってもらうためには、研究成果を社会課題解決に結びつけるシナリオ・戦略を立案できる支援人材、インキュベーターの存在が不可欠です。大学にある研究・技術シーズをVCが投資できるところにまで見える化していくためのストーリーを書ける人=インキュベーターが、研究者と互いに信頼し、情熱をもって事業シナリオを策定することが重要です」



関西スタートアップアカデミア・コアリション(KSAC)

https://ksac.site/

▶ 前編|大学発シーズの事業化で日本の未来を切り開く「関西スタートアップアカデミア・コアリション(KSAC)」



きたおか・やすお◎大阪大学大学院電気工学専攻修士課程を経て、1991年に松下電器産業(現パナソニック)に入社。2006年に大阪大学大学院工学研究科教授、10年10月に経済産業省製造産業局ファインセラミックス・ナノテクノロジー・材料戦略室産業戦略官に着任。14年4月に大阪大学に復職し、20年より大阪大学共創機構イノベーション戦略部門機構長補佐・部門長・教授。

Promoted by KSAC / text by Kiyoto Kuniryo / photographs by Shuji Goto / edited by Akio Takashiro