企業の従業員による不正な経費は、以前は些末な問題と見なす向きはあったものの、実行上の制約も大きかった。従業員が走行距離の申請を水増ししたり、過去の会食の領収書を使い回したり、長年オンラインで運営されてきた「領収書紛失」サイトのいずれかから偽の領収書を購入したりすることはできた。それでも、実行には一定の手間がかかる。証拠も不自然に見えることが多く、見込める見返りもたいてい小さいため、そもそもやらない人が多かった。
生成AIは、その計算を変える。今や従業員は、AI画像生成ツールに数語を打ち込むだけで、数秒でそれらしい領収書を生成できる。結果は飲食店のレシート、月々の携帯電話料金の請求書、さらには署名されてスキャンされたように見える書類にまで似せられる。欺瞞のコストはほぼゼロにまで下がり、ある行為のコストが崩壊すれば、経済学者はそれが増えると予測する。
偽の領収書は、ホワイトカラー犯罪で進行しているより大きな変化をのぞき見る小さな窓であるがゆえに注目に値する。AIは犯罪者が古典的な詐欺をより効率的に回すのを助ける一方で、一般の従業員に「欺くことを正当化しやすく、発見もされにくい」ツールへのアクセスを与えることで、新たな犯罪者を生み出してもいる。
領収書偽造ブーム
最も明確な証拠の一部は、大企業向けに経費監査を行う財務自動化企業AppZenのデータから得られる。同社が収集したデータによると、AI生成領収書は2025年3月には偽領収書の検出フラグの0%だったが、2026年5月中旬には70.8%に達した。わずか14カ月での劇的な変化である。
2026年5月15日までの直近12カ月間で、AppZenはAI生成領収書を1471件検出した。これらは174社の745人の従業員によって提出され、申請された経費精算額は合計14万8143ドル(約2400万円。1ドル=161円換算)に上る。重要なのは、これらの数字が「検出された提出」と「従業員が請求しようとした金額」を示す点である。確定した損失や、実際に支払われた金額を示すものではない。さらに、これらはAppZenが検出できたケースに限られる。一部の不正申請が検知を免れているなら、AI生成による不正経費の実態規模はより大きい可能性がある。
それでも、データは過去からの明確な断絶を示している。1年前、AppZenによれば、偽造領収書の主流は、5ドルまたは10ドル(約805円または約1610円)で「紛失領収書」書式を販売するサイトのテンプレートだった。ところが2026年5月中旬には、そうした旧来のテンプレート領収書は、同社データにおける偽領収書全体の約29%にまで低下した。AI画像生成ツールが、支配的な捏造手段になったのである。「ツールが劇的に良くなった」とAppZenのCTOクナル・バーマはForbesに語る。「AI生成は無料で、即時で、人をだますには十分な出来だ」



