脳の報酬システムへの影響
他の人に認められることが行動の原動力となると、内部の報酬システムは徐々に作り変えられていく。専門誌『Frontiers in Human Neuroscience』に2017年に掲載された査読付きレビューでは、本来努力や進歩そのものを報酬として感じるよう進化してきた脳のドーパミン経路が時間の経過とともに外部要因を報酬として認識するようになることが示されている。言い換えると、何かをうまくやり遂げたときのささやかな満足感は徐々に報酬に感じられなくなり、脳は外部の反応を待ち望むようになる。
これは不安型の愛着スタイルやプレッシャーの強い環境、あるいは支配の一手段として承認を与えなかった職場や家庭など、もっともな理由から多くの人が身につけてしまう反応だ。このことを理解すると問題の捉え方が変わる。解決策は、他の人を気にかけなくなることでも、フィードバックを無視することでもない。外に目を向ける習慣が身につく前に存在していた内なるシグナルを再構築することだ。
習慣を断ち切ってやる気を取り戻す方法
学校や職場、セラピーといった「自律性を支援する環境」に関する研究では一貫した知見が得られている。それは、人はインセンティブや評価によって管理されるのではなく、自分の価値観や好みに基づいて行動できるよう支援されると、やる気は自然と回復するということだ。やる気を無理に作り出す必要はない。行動するための「料金」として他人からの承認が不要になったとき、自ら湧き上がってくる。
実践方法の1つとして、一部の心理学者が「価値観の明確化」と呼ぶものがある。これは、「本当は何を望むべきか」を考えるのではなく、「これまで自分が心から没頭できたものは何か」を特定するための体系的な方法だ。
専門誌『Implementation Science』に2015年に掲載された無作為比較試験では、価値観を明確にする体系的な演習を行った労働者は、対照群と比べてより自律的で内発的な動機づけを持つことが分かった。また、自らの意図を最後まで実行に移す可能性も高まった。その原動力は成果でも称賛でもない。仕事そのものだ。人は、周囲に認められるためではなく、純粋な好みに基づいて行動する領域をたとえ1つでも再発見できれば、より広範な動機づけのシステムが再起動する可能性がある。
もう1つの方法は驚くほどシンプルだ。誰にも評価されないような小さな行動を取ることだ。何かを最後までやり遂げても、誰にも言わない。誰かに相談することなく小さな決断を1つ下し、それで世界が終わるわけではないことに気づく。このシンプルな実践の目的は自分を再調整することにある。そうすることで長い間使われずにいた自分の内なるコンパスが再び正しく機能し始めるようになる。


