これは科学と公衆衛生の観点に基づいた仮定の問いだ。もしも米国で、猛暑日にビールをはじめとするアルコール飲料の摂取を禁止したらどうなるだろうか?
現在、欧州は猛烈な熱波に見舞われており、この過酷な暑さは長引く見通しだ。こうした中、フランスの一部自治体では飲酒を制限・禁止する措置がとられた。この対策は米国においても有効となり得るだろうか。
暑い日に「冷えたビール」が飲めないなんて……
この記事を目にした人の中には、夏の暑い日に「冷えたビール」を禁止するという発想そのものが不快に感じられ、理不尽だと反発する声すらあるかもしれない。筆者としては、この対策を提案しているわけでも、ましてや推奨しているわけでもない。しかし、最後まで読んでほしい。熱波が激しさと頻度を増す一方の昨今、この戦略は遠からず現実のものとなる可能性があるのだ。
欧州が今まさに経験しているような酷暑は、少し前までは想定すらされていなかった。フランスでエアコンが設置されている家庭は約25%にとどまる。欧州のほとんどの国でも状況は同じだ。
なぜかといえば、現地の人々が慣れ親しんできた気候では、気温が38度を超え、44度に達するような事態は誰も予想しえなかったからだ。米国にも長年「エアコン不要」とみなされてきた地域がある。しかし、2021年に太平洋岸北西部を襲った熱波は、新たな現実を突きつけた。最高気温の記録がたびたび塗り替えられ、熱中症など暑さが原因で数百人が死亡した。
うだるような暑さの中、フランスでは最高レベルの「赤色警報」を発令して熱波に警戒を呼び掛けている。欧州各地で猛暑による死者が増え、列車の運行が混乱し、イベントが中止されている。報道によるとフランス政府は、毎年恒例の音楽祭の開催期間中、「赤色警報」発令地域でのアルコール消費を禁止した。
これは飲酒を制限することにより、地域社会で最も弱い立場にある人々への救急医療体制を確保するためだ。暑さをしのごうとして、少なくとも40人が水の事故で死亡した。誰もが命の危機にさらされているが、貧困層や子どもたち、高齢者はとりわけリスクが高く、すでに子どもや高齢者の死亡が報じられている。ちなみに、2003年に欧州を襲った過酷な熱波では7万人以上が命を落とした。



