Snowflake(スノーフレイク)の好決算が、SaaSとエージェンティックAIをめぐる2850億ドル(約46兆1000億円)規模の論争に決着をつけた。
この2年間、私が話をしてきた取締役会はどこも、同じ結末を覚悟していた。AIエージェントがユーザーアカウント(ライセンス)に取って代わり、アカウント数(ユーザー数)に応じた課金が崩れ、ソフトウェア企業が衰退するという筋書きだ。投資市場はこの一つの賭けを信じ込み、ソフトウェアの価値を一気に2850億ドルほど消し去った。ところが5月下旬に数字が出そろうと、その賭けは崩れ去った。
Snowflakeの売上高は33%増えて13億9000万ドル(約2250億円)に達し、アマゾンとは新たに60億ドル(約9710億円)の契約を結んだ。株価は4日間でほぼ50%上がり、その途中には同社史上最高の上げ幅を記録した。一方、いまも大半をライセンス単位で売っているSalesforce(セールスフォース)は、同じ週に弱気の業績見通しを示して株価を下げた。セクター全体が活況を呈し、ソフトウェア株は2001年以来で最高の月となった。
この1年というもの、話題の中心は「SaaSの終末」だった。「バイブコーディング」(自然言語で指示するだけのプログラミング)によって誰もが午後のひとときでアプリを作れるようになり、その裏でアカウント単位の巨大企業が静かに失血死していく──そんな恐怖である。だが今、聞こえてくるメッセージは変わり、エージェンティックAIの分野では職種がむしろ増え始めている。
ジェンスン・フアン「エージェンティックAIはSnowflakeをより強くする」
そんななか、ジェンスン・フアンが台北で開かれたNVIDIA GTC Taipei 2026(エヌビディアの技術カンファレンス)の壇上に立ち、誰もが恐れていたのとは正反対のことを語った。エージェンティックAIがソフトウェア企業を一掃すると人々が警告し続けるなか、フアンは「事実はまるで逆だ」と告げ、いまこそソフトウェア企業にとって信じられないほどの好機だと述べた。そして、悲観論者たちが見落としていた数字を挙げて、その主張を裏付けた。
GitHubへのコミット(コード変更の記録)は、2025年の5億件から、2026年の最初の数か月で14億件近くへと、ほぼ3倍に跳ね上がった。あわせて、毎月9000万件のプルリクエストがマージされ、2000万件の新しいリポジトリが作られている。
フアンの計算では、業界が約3兆ドル(約485兆円)の人件費を払っている3000万〜4000万人の開発者が、いまや9兆ドル(約1460兆円)に近い成果を生み出しているという。だからこそ、エージェントの時代になってもエンジニアの採用は続く、と彼は主張する。
決定的な意味を持つのが、次の一節だ。「これからは膨大な数のエージェントが生まれる。世界はもう、人間の数に縛られない。そうしたエージェントたちは、かつてないほど多くのツールを使うことになる」。
働くエージェントが増えれば、その下で動くソフトウェアも増える。これこそが、強気論のすべてを一文に凝縮したものである。
エージェンティックAI──Snowflake関連分野を支える数字
相場が一気に動き出した5月最終週に、名の知れた銘柄がどれほど動いたかを、以下に示す。
・Snowflake:週間でほぼ+50%。その途中で1営業日+36%という同社史上最高の日を記録
・Okta(オクタ):5月29日に+30%。売上高7億6500万ドル(約1240億円)という決算上振れを受けて
・ServiceNow(サービスナウ):週間で+20%超
・Atlassian(アトラシアン):週間で+26%
・Oracle(オラクル):週間でおよそ+16%
・Microsoft(マイクロソフト):週間でほぼ+8%。ただし年初来では依然約7%安



