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映画

2026.07.09 14:15

老後が過酷なら、あなたは安楽死制度を使いますか?|「PLAN 75」

『PLAN 75』 DVD(4000円(税抜))&Blu-ray(5000円(税抜))発売中 発売元・販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング (C)2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory/Fusee

『PLAN 75』 DVD(4000円(税抜))&Blu-ray(5000円(税抜))発売中 発売元・販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング (C)2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory/Fusee

2021年の暮れ、ネットの番組で経済学者・成田悠輔氏が、日本の少子高齢化や社会保障問題の解決として「高齢者の集団自決、集団切腹みたいなことしかない」と発言し、大きな議論を巻き起こしたことはまだ記憶に新しい。若年層にのしかかる社会保障費負担の増大、世代交代の遅れへの根本的な問題提起のためだったようだが、人権無視の優生思想であり世代間の分断を煽るものとの批判が相次いだ。

肝心の少子化が解決しないのに、これまで働いて納税もしてきた高齢者だけに問題を帰すことは暴論だ。しかし現在、健康を維持し経済的困窮や孤立の不安もなく悠々自適で長寿を寿ぐことのできるのは、一部の富裕層だけでは?という疑問も起こってくる。

実は筆者自身、もっと老いて自立した生活がままならなくなり生きる意欲も失われた時、高齢者向けの安楽死制度があったら救われるかもしれないと思ったことがある。福祉が削られ老後は自己責任という風潮が高まる中で、そう感じている人はどのくらいいるだろうか。

『PLAN 75』(早川千絵監督、2022)は、75歳を過ぎたら死を選択できる制度が施行されている近未来の日本を描いた作品である。第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で、カメラ・ドールのスペシャル・メンションを受賞した。

ドラマの冒頭に置かれているのは、一人の男が老人介護施設に猟銃を持って押し入った直後のシーン。そこに彼の、高齢者への恨みと国民的な議論喚起を願うモノローグが重なる。次いで、75歳以上の高齢者に死を選ぶ権利を認める制度が、激しい反対を押し切り国会で可決したとのラジオのニュースが流れ、画面に浮かび上がってきたホテル清掃員の角谷ミチ(倍賞千恵子)がカメラを見つめる。ここまでの数分で、この作品が扱うテーマの重苦しさとただならぬ状況設定が、視聴者の前にざっくりと投げ出されている。

監督がこのモチーフを取り上げるきっかけとなったのは、2016年7月に起きた相模原障害者施設殺傷事件だという。植松聖死刑囚の「重度・重複障害者は生きている意味がなく、周囲を不幸にする」「日本の財政を圧迫している」などの発言は、確かに本作の犯人の動機と重なっている。

SF作家・星新一のショートショート『生活維持省』を思い起こす人もいるだろう。今とは真逆に人口爆発が社会問題とされた1960年の作品で、国民すべての健康で文化的な生活が、公平に選抜された者が国家機関の手で”殺処分”される制度で維持されている、というディストピアが描かれていた。

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文=大野左紀子

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