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映画

2026.07.09 14:15

老後が過酷なら、あなたは安楽死制度を使いますか?|「PLAN 75」

『PLAN 75』 DVD(4000円(税抜))&Blu-ray(5000円(税抜))発売中 発売元・販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング (C)2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory/Fusee

「プラン75」では、後期高齢者の安楽死が本人の申請を承けて遂行されることになっている。申請者には10万円が振り込まれ、面倒な身辺整理の必要もない。豪華ディナー付きの体験ツアーまで用意されている。イヤな言い方をしてしまえば、「国家による高齢者の自殺幇助」である「プラン75」は、年代を問わない公平な”殺処分”よりは心理的抵抗の少ないであろう制度である。

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ドラマは前半、78歳で身寄りもなく古びた市営アパートに独居し、働かなくては生活していけないミチが、職を解雇された日を境に徐々に追い詰められていく姿を描いていく。

彼女の住まいや生活ぶりの描写が丁寧だ。昭和な雰囲気の暖簾に温度計、旧式の家電や家具など、すべてに年季が入っているが整理整頓され、一人の食事に手を合わせて「いただきます」と呟く姿から、ミチの質素ながらもきちんとした生活態度が窺われる。

ホテルで清掃員として働く3人の仲間とカラオケを楽しむシーンでは、美声も披露する。しかし仲間の一人に「子供がいたって寂しいよ」と言われ、独り言のように呟く「寂しいだけが人生だ」に、長い年月の中で辿り着いた諦念が滲む。

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共に職場を去る日、使っていたロッカーに向かって「ありがとうございました」と手を合わせる場面も印象的だ。何気ない動作の一つ一つに、身についた品と謙虚さが自然と現れており、そうした美質をひっそりと保持して生きている高齢者は、目立たないだけで少なからずいるのだ、ということに思い当たる。顔に刻まれた深い皺に個人史を感じさせる倍賞千恵子の静かな佇まい、柔らかで深みのある発声が素晴らしい。

ミチらの解雇は、仕事中に同僚が倒れたことでホテルに「そんな高齢者を働かせているなんて」という世間の非難が集まったからだった。だがそこに、働かねば生きていけない高齢者への想像力はない。当然のことながら再就職の道は険しく、一枚一枚薄皮を剥ぐように希望が失われていく残酷なプロセスを経て、疲れ果てたミチは「プラン75」へと引き寄せられていく。

次ページ > モバイル店舗のスタッフのように「死ぬ相談」を進める青年の変化

文=大野左紀子

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