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経済・社会

2026.06.29 15:15

オランダの選挙歴戦を制した政治戦略家が語る「ポピュリズムの物語に対抗する究極の処方箋とは何か?」

世界中で吹き荒れるポピュリズム。ポピュリズムとは何なのか? ヘルト・ウィルダース党首が率いる極右・自由党(PVV)によるポピュリズムが吹き荒れるオランダ。与党自由民主国民党(VVD)で選挙戦略家としてウィルダースと戦い、勝利し続け、その時の経験をつづった本『The Game of the Populist : How They Play it, How We Win it(ポピュリストのゲーム 彼らはどう戦い、我々はいかに勝利したか)』(日本でも近く翻訳出版予定)を去年刊行したバス・アーリングスに話を聞いた。


——『ポピュリストのゲーム:彼らはどう戦い、我々はいかに勝利したか』を書いたきっかけは何だったのか。あなたのような政治戦略家は日本では珍しい。自己紹介と仕事について簡単に説明してほしい。

まず告白から始めたい。私が行動心理学にたどり着いたのは、人間の心に知的好奇心を抱いたからではない。負け続けていて、なぜ負けるのか分からなくなっていたからだ。私は2015年まで、オランダのマルク・ルッテ首相の下で政権を担っていた自由民主国民党(VVD)で、選挙戦略家として何年も働いていた。だが、ポピュリスト政党・自由党(PVV)のヘルト・ウィルダースを相手にすると、従来の手法はことごとく失敗した。緻密な政策反論を出しても、彼は過激なことを言って支持を伸ばす。討論に内容で勝っても世論調査は動かない。私の職業が前提としてきた「合理的な有権者」モデルは、最も重要な局面で体系的に間違っていたのだ。

その気づきが、ダニエル・カーネマンの「システム1/システム2」理論、ジョナサン・ハイトの「道徳心理学」、ジョージ・レイコフの「フレーミング」理論へと私を導き、2017年オランダ総選挙の戦い方を全面的に作り直すことになった。我々は予想を上回る勝利を収め、2015年から2022年までVVDは地方・市・国政で5連勝した。党史上最長の連勝記録だ。

最初に言っておきたい。ウィルダースを、トランプを、ブレグジットを選んだ有権者たちは、愚かでも騙されていたのでもない。安全への渇望、帰属の欲求、自分のような人間の努力がまだ報われてほしいという願い――といった現実の感情に、人間らしく応えていただけだ。非難されるべきは、何年も耳を傾けず、成果を出さず、そうした欲求を「不当」あるいは「面倒」なものとして扱ってきたエスタブリッシュメントの側にある。有権者が民主主義を裏切ったのではない。エスタブリッシュメントが有権者を裏切ったのだ。この認識に立たないかぎり、離れていった有権者を取り戻すことはできないだろう。

今は、アムステルダムの戦略コンサルティング会社を経営し、行動科学を世論や政治コミュニケーションに応用している。私の仕事は、選挙実務と行動科学の交差点にある。この交差点こそが最も重要な場所だと、身をもって悟ったのだ。

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インタビュー=青野 浩 写真=バス・アーリングス提供

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