【重要】会員機能一時停止とサイトメンテナンスのお知らせ

経済・社会

2026.06.29 15:15

オランダの選挙歴戦を制した政治戦略家が語る「ポピュリズムの物語に対抗する究極の処方箋とは何か?」

では、ポピュリズムに対抗しても失敗し、無力となってしまうのは、どういう場合だろうか。無力となるのは、常に、ポピュリストの提示するフレームに乗って反応(リアクティブ)してしまったときだ。反応(リアクティブ)してしまった時点で、もう負けている。相手の言葉を含んだ反応は、相手の言葉を強化するからだ。主流派が夕方のニュースでウィルダースの発言を訂正している時点で、彼のアジェンダ設定に乗ってしまったことになる。私はこれを、敗北ではなく勝利から学んだ。2017年に我々がうまくやれたのは、相手の土俵に乗らなかったからだ。国民の要求に応える語り口——「頑固で実践的で寛大なオランダ的楽観主義」——を、ウィルダースが「移民を最も恐れているのは誰か」というフレームを設定するより前に、公共の場へ送り出した。ウィルダースより先に「希望と楽観こそが、最後には恐怖と怒りに勝つ」とアジェンダ設定したわけだ。機先を制さなければならない。「恐怖」についての会話が前提になってしまったとき、「希望」を持ち出しても、希望は素朴に聞こえてしまう。だから私は、「ポピュリズムと戦う」という言葉を警戒している。「戦い」とは定義上、反応(リアクティブ)だ。民主主義的な答えは、「戦う」ことではなく、「先んじる」「機先を制す」ことにある。

advertisement

SNS社会とポピュリズム、そして未来

——AfD党首のアリス・ワイデルや日本の参政党は、SNSを巧みに使って支持を集めている。ポピュリズムの台頭は、「こうしたSNSのドーパミン過剰社会」と「格差拡大と大規模移民」の、どちらが重要なのか。また、感情過多の社会が常態化する中で、あなたはなぜ楽観的でいられるのか。

どちらも重要だが、それぞれ別の働きをしており、混同すると答えが見えなくなる。ポピュリズム拡大の構造的原因は、進歩という約束が破綻していることだ。賃金は二十年近く停滞し、住宅は若い世代に手の届かないものになり、オートメーション化が中間層を支えた仕事を奪った。前の世代が登った梯子は、引き上げられた。「子どもたちが自分たちより良い暮らしをできるのか」への答えが「ノー」に傾くとき、ポピュリズムの土壌は整う。SNSは、ポピュリズムの促進剤(加速装置)だ。Facebook、X、TikTok、YouTubeのアルゴリズムは、行動心理学から見ればシステム1を増幅する機械で、怒りや恐怖や部族的連帯でエンゲージメント(深いつながりや強い絆)を最大化する。だが、順序に注意してほしい。「格差」と「進歩の約束の破綻」が先だ。SNSは、人々の感情をより効率的に届ける方法になっただけだ。明日SNSをなくしても、住宅・賃金・公正さに手を付けなければ、ポピュリズムは減速はしても止まらないだろう。

では、私は楽観主義者なのだろうか。正直に言えば、楽観主義者ではない。次の十年が民主主義にとって楽になるとは思わない。構造的圧力は、どれも未解決だ。だが私は、ポピュリズムに対抗するには、楽観こそが義務だと考えるに至ったのだ。これは道徳ではなく、戦略の話だ。恐怖と怒りに対して、普通の有権者をめぐる競争で確実に効く唯一のものが、希望と楽観だからだ。第三の選択肢はない。皮肉では恐怖に勝てない。冷静な現実主義では怒りに勝てない。だから希望と楽観は、世界が今そう感じられるからではなく、実践手段として必要だからこそ、公共の場に置かれねばならない。

advertisement
次ページ > 事実、希望と楽観こそが重要である

インタビュー=青野 浩 写真=バス・アーリングス提供

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事