行動心理学に基づくポピュリズム理論
──従来のポピュリズム分析は「エリート vs. 大衆」という現象の説明に終わりがちだった。あなたの行動心理学に基づいた分析枠組みは非常に斬新で説得力がある。あなたのポピュリズム理論について、簡単に説明してほしい。
その通りだ。従来のポピュリズム分析は、「エリート vs. 大衆」という現象の記述で終わりがちだ。それらは、ポピュリストの発言内容の説明に終始してしまっている。私の理論は、そうした分析からさらに踏み込んだものだ。
簡潔に言えば、ポピュリズムとは物語だ。ポピュリズムとは常に、「高潔な人民」を「腐敗したエリート」に対置し、前者のために後者へ立ち向かえると主張するリーダーの登場として物語られる。国によって悪役は異なるが、物語としての語り口は変わらない。物語であるがゆえに、人間の心理はどこでも同じように反応するからだ。
私は本の中でこう述べた。「ポピュリズムとは階級的対立ではない。ポピュリズムとは物語なのだ。高潔な人民と腐敗したエリートについての物語であり、語り手は、説得力をもって語るために自身が貧しい必要はない。語り手に必要なのは、自分だけがエリートの腐敗を免れ、今や人民の代弁者であると主張することだ」と。
こう理解すれば、二つの実践的な発見が得られる。一つ目は、まったく異なる政策を掲げるポピュリストが、なぜ揃って同じパターンにはまるのかを説明できることだ。ウィルダースはイスラム教徒を標的にした。オルバンはジョージ・ソロスとブリュッセル(EU本部)を標的にした。トランプが敵視したのは、メキシコ人、イスラム教徒、ディープステート、メディア、裁判官、軍高官、そして自政権の閣僚たちだ。標的に共通点はない。つまり、敵とみなされる相手は交換可能なのだ。変わらないのは、その悪役を「高潔な人民」に対置する物語の構造だ。ポピュリストをポピュリストたらしめているのは、特定の主張内容ではなく、この物語の構造なのだ。
二つ目は、ポピュリストの主張をファクトチェックしても支持がほとんど低下しない理由が分かることだ。物語であるがゆえに、その主張内容は真実であることに依存していない。物語とは、見覚えのある構造や語り口に依存している。事実を訂正しても、構造や語り口はそのまま残る。こうしてファクトチェックは無効化される。
ポピュリストの台本には、見分けのつくテンプレートがある。敵を作る。共有された不満で内輪集団を築く。複雑な問題に単純な解決策を約束する。切迫感を生み出す。こうしたコアの主張を、安心感を覚えるまで繰り返す。これらはすべて、システム1に向けて直接語りかけられるのだ。
これが、ポピュリズムという現象を理解するのに、政治哲学よりも行動心理学が適している理由だ。ダニエル・カーネマンの行動心理学による「システム1/システム2」思考の区別は、ポピュリストのレトリックに合理的な反論が有効でない理由を教えてくれる。システム1は、高速で直感的、イメージベースの思考。システム2は、熟慮的で慎重、分析的な思考だ。政治的意思決定の約2%はシステム2で行われる。残りの意思決定は、システム2に到達する以前で行われている。


