ニューヨークの街中で日々大量に捨てられるプラスチックバッグ。本来ならゴミとして埋立地に送られるか、適切に処理されないまま水路に流れ出てしまうはずのそれが、洗浄され、細いリボン状に裂かれ、職人の手で織り直されて、バッグとして生まれ変わる。
筆者の手元にも、そうして生まれた二つのバッグがある。スマイルマークの黄色い大型トートと、高級イチゴブランド・Oishiiとのコラボで生まれたイチゴのアップリケのミニバッグだ。

どちらのバッグも、「ANYBAG(エニーバッグ)」というニューヨークのブランドが作っている。同州ではプラスチック袋禁止法施行前、年間230億枚ものプラスチック袋が使用されており、その多くが適切に処理されないまま廃棄されていた。2020年に禁止法が施行された今もなお、大量の使い捨てプラスチック袋が街に溢れ続けている。こうした問題に立ち向かい、2020年にANYBAGを立ち上げたのが、Alex Dabagh(アレックス・ダバグ)氏だ。
持続可能な未来を実現するシンプルなアイデア
ANYBAGの仕組みは、驚くほどシンプルだ。
まず街や学校、企業から回収した使い捨てのプラスチック袋を洗浄し、細いリボン状に裁断する。そのリボンをコットンコード(綿紐)と合わせ、職人が木製の織機を使って手織りでテキスタイルに仕上げる。その生地を裁断・縫製してバッグに仕立てる。染料も特殊加工も、余計な化学処理も一切ない。素材は、素材のまま。ただ、形を変えるだけである。
1点ごとに色の出方も風合いも違う。回収されたプラスチック袋が持っていた色が、そのままテキスタイルの模様になる。工場で均一に作られた「製品」ではなく、それぞれが文字通りの「一点物」なのだ。
ニューヨークの街角で長年親しまれてきた「THANK YOU HAVE A NICE DAY」と書かれスマイルマークが印刷された、あの白いレジ袋がデザインの元になっているトート「THE CLASSIC」は、「Electric Cab(イエローキャブの黄)」や「Gotham(夜のNYの色)」などのカラー展開があり、消えゆくストリートカルチャーの記憶をアーカイブするアートピースにもなっている。
世の中のリサイクルやアップサイクルの多くは、元の素材を粉砕・溶融し、まったく別の素材に作り替えることで成立している。それはそれで有意義な技術だが、そのプロセスで「元のもの」は消えてしまう。ただ、ANYBAGはそうではない。あのプラスチック袋は、リボンになり、生地になり、バッグになっても、あくまで「あのプラスチック袋」のままだ。それは破壊ではなく、変容である。ありそうでなかなかなかった、この上なくシンプルな発想だ。
筆者が考えるANYBAGの最大の強みは、その「シンプルさ」にある。Alex氏も、この力を強く信じていた。「既存の素材をそのまま生かし、複雑にせずに持続可能な未来を目指す」。ANYBAGにはこうした信念が込められている。



