スペースX(SpaceX。ティッカーシンボル:SPCX)の株価は直近3営業日で30%下落(米異国時間6月24現在)しており、一見すると大きな動きに見える。
しかし、この下落幅はまったく十分ではない。
今回の売り急ぎを経てもなお、スペースXの株価は過去12カ月の売上高の約100倍、過去12カ月のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の200倍近くで取引されている。それでいて売上高の成長率は30%台前半にとどまっている。インサイダーのロックアップ(売却制限)が解除時期を迎えつつあり、ライバルとなる時価総額1兆ドル(約161兆円。1ドル=161円換算)級のAI企業のIPO(新規株式公開)が控え、金利の先高観も強まる中、この株は依然として割高に見える。
ロックアップ(売却制限)解除へのカウントダウンが進行中
企業が株式を上場すると、インサイダーや従業員は通常、IPO後の一定期間、保有株の売却を制限(ロックアップ)される。スペースXでは、この制限がまもなく解除され始める。
まず決算発表後の8月上旬から中旬にかけてインサイダー株の20%が解除され、続いて米国時間8月21日前後と9月10日前後にそれぞれ7%ずつの解除が予定されている。さらに、株価がIPO価格を30%上回る水準で取引されれば、別枠で10%の解除が自動的に発動する。
インサイダーは9月上旬までに最大で全株式の44%を売りに出す可能性
スペースXは膨大な従業員を抱え、その報酬の多くを株式で支払っている。そのため、たとえごく一部が売却に動いただけでも、市場がまだ織り込んでいない売り圧力が一気に膨らみかねない。フェイスブックやウーバーといった過去の大型IPOでも、ロックアップ解除を機に株価が大きく値を下げたが、そのいずれも今回ほど急ピッチな解除スケジュールには直面していなかった。インサイダーは9月上旬までに最大で全株式の44%を売りに出す可能性があり、市場に出回る浮動株を約900%も膨らませかねない。
OpenAIとAnthropicの上場が、スペースXの資金調達に響きかねない
今後数カ月に予想される最も重要な競合IPOは、通常のテック企業の上場ではない。OpenAIとAnthropicはすでにIPOに向けた秘密申請を済ませている。Anthropicが6月上旬、OpenAIがその直後に申請したことで、2026年後半に注目度の高い上場が実現する道筋が整った。両社はいずれも1兆ドル(約161兆円)超の評価額が見込まれ、世界経済を変革するという大きな物語を背負っている。
機関投資家が動かせる資金には限りがあり、投機的なリスクを取る余力にも限度がある。OpenAIとAnthropicは合わせて数千億ドル(数十兆円)規模の資金を集めにいく可能性があり、成長重視のファンドにとっては有力な乗り換え先となる。これはスペースXの資金調達に直接響きかねない。



